▲自身16回目のダービー挑戦、過去の悔しさや今年の決意を語る
すごくシンプルな敗因に気付いた
毎年、5月に入ると徐々にトレセンの雰囲気が変わってくる。一番顕著なのが記者たちからの質問で、その内容の変化から、「ああ、ダービーが近づいてきたなぁ」と感じることも。そんな変化を肌で感じながら、今年もいよいよダービー週を迎えた。
皐月賞後、短期放牧に出たリアルスティールは、5月9日の土曜日に帰厩。13日にCWで初めて跨り、劇的な変化こそ感じなかったが、身のこなしが素軽くなって、落ち着きも十分。皐月賞時より動ける体になって帰ってきたな──そんな感触を得た追い切りだった。
皐月賞の回顧で、「抜け出して1頭になっても集中して走れるよう、矢作先生には単走で走らせる調教を提案させてもらおうかと思っている」と書いたが、この日はその単走での追い切り。もともと帰厩後の1本目はいつも単走なのだが、これまで以上に最後まで集中して走っていた。矢作先生はスタッフに全幅の信頼を置いているので、あとは自分とスタッフとの相談になるが、1週前と最終追いはおそらくいつものパターンとなるはずだ。
それにしても、矢作先生のスタッフへの信頼感はすごい。もちろん、それだけスタッフも優秀ということだが、最終的な責任はすべて自分が取るという思いがあるからこその信頼関係だと思う。
キングヘイローを皮切りに、ダービーではたくさんの馬に騎乗させてもらってきたが、一番手応えを持って臨んだのは2013年のエピファネイア。“勝てる”というより、“獲らなアカン!”という気持ちが強く、獲ったらジョッキーとして何かが変わるんじゃないか…という漠然とした期待感を持って臨んだ一戦だった。
結果的に、終始引っ掛かったばかりか、3コーナーでは前の馬と接触し、大きくバランスを崩すアクシデント。危険を察知しながらもデッドゾーンを走り続けたわけで、今思えば平常心とはほど遠いところに気持ちがあったということだろう。とにかくあのダービーのあとは落ち込んだ。レースに負けて、あんなに落ち込んだことは初めてだった。
▲キズナに半馬身及ばなかったエピファネイアでのダービー(撮影:下野雄規)
そういう経験をすると、普通はそのレースへの思いが一層強くなるのかもしれないが、自分の場合はむしろ逆だった。なぜなら、“自分の技術が足りなかっただけ”という、すごくシンプルな敗因に気付いたから。レースへの思いや心の持ち様は二の次で、勝ちたいなら技術を磨くしかないと、すごく前向きに開き直ることができた。
あれから2年。