▲伝説の菊花賞から8か月、トーホウジャッカルについて主戦の酒井学騎手が語ります
菊花賞をデビューから史上最速149日で優勝。なおかつレコードタイムを大幅に更新しての勝利だったトーホウジャッカル。伝説を作った菊花賞馬が、ついに待望の復帰戦を宝塚記念で迎える。主戦を務める酒井学騎手に、トーホウジャッカルの強さの秘密と、天皇賞・春を回避した今春の状況を伺った。(取材・文:大恵陽子、写真:榎田ルミ、井内利彰、編集部)
ダービー前日の遅いデビュー
「デビュー戦で、ビビッときたんです」
主戦を務める酒井学騎手(2戦目のみ函館SS騎乗のため幸英明騎手)は、トーホウジャッカルの印象をそう語った。
「初戦はスタートが全然出なくて、最後の直線しか競馬をしていません。追走に戸惑って最後だけ脚を伸ばす、というのはよくあることなんですが、この時の感触が他の馬にはないものを感じたんです。10着だったけど、秘めたものを持っているなと」
そのデビュー戦は5月31日。日本ダービー前日の3歳未勝利戦(京都・芝1800m)だった。最後方からの競馬となったが、上がり3Fは最速タイをマークした。2戦目はダートで9着。続く3戦目、再び芝に戻るとマイル戦で接戦の末、初勝利をものにした。7月12日の中京競馬場だった。
さらに続く3歳以上500万下(8月3日・小倉・芝1800m)は先行し、直線で前の3頭が壁になる場面がありながらも、抜け出し勝利。春のクラシックを戦ったライバルの多くは、休養に入っている頃だった。
「(谷潔)先生も僕も『まさか2連勝するとは』と驚きました。ポテンシャルの高さは感じていましたが、デビューが遅かった分、他の馬と経験値が違います。キャリア豊富な馬を相手に勝てるのは、もう少し段階を重ねてからかな、と思っていました。でも、成長力がこちらが思っている数倍持っていましたね」
一戦ごとに、主戦は相棒の成長を感じていた。
「初勝利の時は、一回交わされたのを差し返して勝ったんです。2勝目は、抜け出し方が器用な子だな、と。派手にちぎって勝つわけではないけど、毎回レースの度に『やっぱりすごい馬だな』って上積みの大きさを感じました。馬込みも全然怖がらないし、器用さに長けています」
▲美しいたてがみをもつ尾花栗毛のトーホウジャッカル
クラシック最終戦へつないだ神戸新聞杯
その後、1000万下特別・玄海特別(9月6日・小倉・芝2000m)は2着に惜敗。縦長の展開の中、これまでよりやや後ろの位置取りとなる中団から進んだ。このレースは、トーホウジャッカルにとって大きな意味を持ったレースだった。