(つづき)
控えてきた南関東騎乗を増やした思い
内田騎手は今年に入って、南関東での騎乗を増やしている。これまでもダートグレードなどで騎乗はしていたが、最近は遠征した日に、他のレースでも地元馬に騎乗することが多くなった。
「JRAに移籍した頃は、中央から地方に乗りに行った時に、根こそぎ騎乗馬を取ってしまうのはどうなんだろうという気持ちがありました。毎日そこで一生懸命頑張ってる子がいるのに、たまに乗りに行った僕がチャンスを摘むことになってしまう。それで、遠征馬以外は騎乗馬を増やさなかったんです」
トップに立つ者だからこそ次の世代の成長も考え、地元馬の騎乗を控えていたという内田騎手。しかし、あの悲しい出来事によって、内田騎手の心は動いた。
「後藤君がああいうことになった時に、自分もいつ騎手を辞めることになるかわからないと痛感しました。あの出来事は本当に大きくて…。このままでいいのかと、一人の騎手としていろいろなことを考えて、乗れるうちに乗らなきゃどうするんだっていう気持ちになりました。
今は地方に行く機会があった時は、地元の馬にも乗せて下さいと頼むようになりました。単発になってしまうけど、若い子にとっても、自分が乗った時と他の人が乗った時の違いで少しでも刺激できればと思うんです。若い子が勉強になるかはわからないけど、自分の騎乗で少しでもアドバイスになれば、そういうことも大事なのかなって」
▲「自分の騎乗で少しでも若い子の勉強になれば、そういうことも大事なのかなって」
内田騎手ほどの実績を持った騎手でも、日々変化し上へ上へと目標を掲げていく。競馬の世界で戦い続けることは、簡単ではないのだ。
「ずっと騎手でいたいと思っても、どんどん淘汰されてしまう。