「難解な七夕賞」の完全復活
夏の福島の開催4日目(2週目)に移ったのは、マイネルラクリマの勝った2013年からのこと。いきなり「1分58秒9」のレースレコードだった。
メイショウナルトの逃げ切った昨2014年、七夕賞のレコードはさらに更新されて「1分58秒7」となり、今年は、3年連続のレースレコード「1分58秒2」が記録された。
これには時期だけでなく、芝刈りのタイミングも関係すると思われる。今週は、いつもよりふさふさ伸びた印象もあった第1週とは一変、7日(火)の芝刈りでかなり芝の長さが変化し、土曜日から芝コースの時計は明らかに速かった。
この時計勝負の芝コンディションを最大の味方にできたのは、1800m(京都)に1分43秒9の日本レコードをもつ
グランデッツァ(父アグネスタキオン)だった。前回の鳴尾記念では折り合いを欠いたうえ、勝負どころでさらに下げる騎乗で不評を買った川田将雅騎手だが、結果は、前回のムリを承知で下げた騎乗が今回の快勝に見事につながったのである。前回の川田騎手=グランデッツァのあまりにも…のレース運びを嫌ったファンは、失敗だったかもしれない。
グランデッツァはこれで3歳以降、14戦【3-1-1-9】。トップクラスのオープン馬とすれば非常に波の大きい成績である。もう折り合いの不安はなく、先行して抜け出すだけでなく、タメが利けば好位から伸びる脚質の幅を身につけたとしていいが、楽々と日本レコードを樹立するくらいだから、状態のいい時に爆走する燃焼型であるようにも思える。いつも調教は動くが、今回のように「それにしても身のこなしがいつにも増して鋭い」。そんな動きが伝えられたときが、グランデッツァのチャンスなのだろう。3歳以降、ここまで連続連対はない。
もう、6歳夏。サマー2000シリーズのチャンピオンを狙う手はある。暑い夏の無理は避け、秋のビッグレースでやっと本物になったグランデッツァの真価を問うローテーションもある。最初から「アグネスタキオンの傑作。後継種牡馬に…」と大きな期待を集めていた注目馬(皐月賞1番人気)であり、このあと陣営の選ぶ日程に注目したい。母の父マルジュは、今春、サトノクラウンの父として大きく評価を上げた。
2着に突っ込んだ
ステラウインド(父ゼンノロブロイ)は、8番人気にとどまったあたり、ここにくるステップの判断が難しい馬だった。1月の中山金杯2000mを賞金不足で除外され、やむをえず回った万葉S3000mだったが、そこを勝った。ならばと、ダイヤモンドS→日経賞→目黒記念と2500m以上の長距離路線に転換したが、やっぱり距離が長すぎる。そこで、過去3勝を記録し、1分58秒2の勝ち星もある2000mに戻ったところ、本質スピード系のこの馬にとって絶好のコンディションであり、最速の上がり「34秒2」で突っ込んできたのである。
夏のローカルのハンデ重賞「七夕賞」G3が今年の最大目標などという馬はいないところが、七夕賞を難解にする要因のひとつであり、成績の上がらない伏兵はここに出走したい。3着に粘り込んだのは1-2着馬と同じ6歳の
マデイラ(父クロフネ)。なんと16番人気だった。
マデイラは、オープンに昇級して【0-0-0-7】。福島コース【0-0-0-3】。ここまで計7回の連対は「8、8、4、5、5、2、6」番人気。根っからの伏兵タイプである。軽量52キロをフルに生かし、前後半の1000m「59秒5-58秒7」=1分58秒2という、この日の馬場にしてはスローにも近い平均ペースの流れに乗り切っての快走だった。強気、強気に攻めの騎乗となった大野拓弥騎手の好騎乗である。複勝4000円。
これで、福島で行われた近年5回の七夕賞では、「11、6、14、7、7、14、10、8、16番人気」馬が3着以内に快走したことになった。かつて、1番人気馬26連敗で知られることになった「難解な七夕賞」は、しばらく鳴りを潜めていたが、これで完全復活である。
1番人気に支持された5歳牡馬
レコンダイト(父ハーツクライ)は、好調=音無厩舎、金子オーナー、M.デムーロ騎手…。加えて目黒記念2500mを2分29秒台の好タイムで2着した上がり馬であることなど、好材料がそろっていた。と同時に、過去6戦した2000mの最高時計が2分00秒9にとどまる決定的な死角があった。また、G2を好タイムで2着(55キロ)したのに、G3のここでも軽ハンデに近い同じ55キロにとどまった理由を考える必要もあったろう。直近に1600万下を勝ったばかり。2000mでの能力ランクは高くないのではないか、と。
出遅れの不利がもっとも痛かったが、未勝利は小倉で勝っているものの、外から進出しかけてスムーズさを欠くなど、小回りコース(福島は初めて)のスピードレースは考えられていた以上に合っていなかった。のびのび走れる広いコースで巻き返したい。自身の最高タイムを1秒6も短縮して1分59秒3だった。
3番人気の
アルフレード(父シンボリクリスエス)は、中位でうまく流れに乗り、2着ステラウインドより早めのスパート。伸びかかるシーンもあったが最後は切れ味負けというより、自身のスタミナ切れの印象があった。新潟大賞典2000mを上がり32秒7で小差3着していたが、新潟の超スローの切れ味勝負でスタミナまで推し量るのは難しい。明らかに立ち直っているだけに、1600〜1800mの適鞍を探したい。
穴馬として期待した
フラアンジェリコ(父ネオユニヴァース)は、レコンダイトと並んで出遅れ。思い切って後方一気を狙ったが、メイショウナルトが控え、
トウケイヘイローが主導権をにぎった流れは「59秒5-58秒7」。レース上がりが34秒5。力及ばずと同時に、流れも味方してくれなかった。
マイネルディーンの444キロ(-12キロ)と、
クランモンタナの478キロ(-12キロ)は、絞れるこの時期とあって大きな細化とは映らなかったが、そろって最初からレースの流れに乗れなかった。6歳クランモンタナは、もう今さらだろうが、本当は血筋通りのマイラーだった気がする。