▲“運命の2013年”に訪れた大きな出来事を明かします
たったひとつの出会いで人間は変わる
「ここで乗りこなせなかったら“引退”──」
そんな覚悟を胸に挑んだ神戸新聞杯。あのレースを勝てたことで得た自信は本当に大きく、ちょっと言い過ぎかもしれないが、「この難しい馬を乗りこなせたんだから、どんな馬でも乗りこなせる」と思えたほどだった。
今思えば、ジョッキーとしてあのレースこそ岐路だったと思う。そこを無事、勝利という形で乗り切れたことで、本番の菊花賞はまったく緊張せずに挑めた一戦だった。ただ、今度は「乗りこなせました。折り合いも付きました。でも5着でした」では意味がない。さらに、最後方から行って、直線だけ脚を使わせる競馬も可能だが、あの馬に関しては、それでは3000mを乗りこなしたことにならないという思いがあった。
自分があの菊花賞で成し遂げたかったのは、あくまで正攻法の競馬で勝つこと。相手関係から多少掛かっても勝てる自信はあったし、とにかく正攻法で勝つことだけを目指した。
結果は5馬身差の勝利。本当に本当にうれしい1勝だった。レースから引きあげて来たときに、思わず口をついて出たのが「やっと…、やっとや!」という言葉だったのだが、どうやら「やっと男馬のクラシックを勝てた」という意味で“やっと”という言葉をとらえた人が多かったらしい。
でも、実際は違った。自分の技術が未熟なばかりに、皐月賞、ダービーを惜敗。そこからトレーニングメニューを変え、意識改革を経て、「やっとエピファネイアで結果を出せた」という意味での“やっと”だった。
▲逃げるバンデを直線入り口でかわし、後続に5馬身差をつけて完勝
▲「やっと結果を出せた」静かに、力強く右手を握りしめた
以前にも書いたが、男馬でのビッグタイトルが少ないことで、ジョッキーとしての説得力に欠けるところはあると思う。が、自分自身、そのことをプレッシャーに感じたことは一度もなかった。翌日の新聞には、