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岩田騎手を配した陣営の作戦勝ち/函館記念

  • 2015年07月20日(月) 18時01分


次走に予定している札幌記念が試金石

 今年は、「3歳馬…1頭、4歳馬…1頭、5歳馬…3頭」。若いグループはごく少なく、そのほかは「6歳以上馬…11頭」という近年のパターン通りの組み合わせだった。

 しかし、勝ったダービーフィズを筆頭の上位1〜3着は「5歳-4歳-3歳」。ベテランホースが好走することの多いこの時期のローカルのハンデ重賞とすれば、珍しい結果となった。1週前の七夕賞は「6歳-6歳-6歳」である。開催の関係で、再び函館記念が札幌記念の前の7月に行われるようになった1997年以降、今年のヤマカツエースのように出走数のごく少ない3歳馬が、3着以内に好走したのは初めてのことになる。

 勝った5歳ダービーフィズ(父ジャングルポケット)は、これが初の重賞制覇。これまで夏の北海道シリーズには出走したことがなかったが、父のジャングルポケットは、札幌芝【2-0-1-0】であり、母の全兄マンハッタンカフェは札幌芝【2-0-0-0】。牡馬とすればどちらかといえば小柄馬だが、北海道シリーズの洋芝はぴったり合っていたのだろう。父ジャングルポケット(その父トニービン)の産駒はこれでJRA重賞32勝目だが、うち7勝が函館、札幌となった。

 岩田康誠騎手(41)は、今年もうJRA重賞8勝目。函館シリーズではすでに独走の19勝を記録し、函館リーディングは確定的である。今回はテン乗りだったが、岩田騎手を配した陣営の作戦はズバリ大正解だった。このあとは、定量のG2「札幌記念」2000mを予定している。負担重量が一気に増えるそこで勝ち負けに持ち込むとき、5歳の今年になって3勝した遅咲きタイプは、秋のG1シリーズが展望できることになる。

 10番人気でアタマ差2着に快走した4歳ハギノハイブリッド(父タニノギムレット、母はトニービン産駒)は、3歳春に京都新聞杯を勝って日本ダービーに挑戦のあとずっとスランプ状態だったが、時計の速いレース、上がりの速い競馬に対応できないようなところがあった。おそらく洋芝の函館が合っていたのだろう。いつもより早め早めに動いた積極策も正解だった。

 この相手にハンデ56キロは、最近の成績を考えると楽ではないと思えたが、ベテランの多いハンデ戦のここでは、G2制覇の底力は1枚上だったということか。体を大きくし、パワーを前面に出す馬に育て上げるタイプではないのも良かったのだろう。

 53キロの軽ハンデだったとはいえ、2000mが初めてどころか、1800mの経験もなかった3歳ヤマカツエース(父キングカメハメハ)の3着健闘は立派だった。4番人気で500万下を勝ち、7番人気でニュージーランドTを制し、今回もまた7番人気での好走。大駆けタイプなのだろう。カナダG3勝ちのある輸入牝馬の祖母イクセプトフォーワンダ(加)には、ノーザンダンサー(加)直仔のヴァイスリージェント(加)=ヴァイスリーガル(加)の全兄弟クロスが[3×4]の形で成立している。全然、関係ない気もするが、11番人気で初距離だった87年の皐月賞2000mを2着したゴールドシチー(父ヴァイスリーガル)を連想してしまった。このあとも、穴馬タイプとして活躍してくれるだろう。

 1番人気のエアソミュール(父ジャングルポケット)は、中団につけて途中まで行きっぷりは悪くないように映ったが、あまりいいところなしの4着。いつも人気で、絶えず接戦に持ち込んでいるようなイメージのあるこの6歳馬、これで28戦【10-0-5-13】。まるで逃げ馬のような分かりやすい成績を残している。3着5回も振り返ってみると、だいたい勝ち負けとは関係ない3着である。気難しいといわれるが、実際は、淡白というか、いさぎよしの性格であり、勝てそうもなかったら2着にもこない。これで北海道シリーズは【1-0-0-4】となった。

 逃げたマイネルミラノ(父ステイゴールド)は、うまくマイペースに持ち込んだとみえたが、気分良く行きすぎて途中からオーバーペースに陥った。前半1000m通過「58秒6→」はもうあの時点でちょっと厳しかったが、前半1000m標識を過ぎたところから「11秒9−11秒8…」。やっとハロン12秒台にペースを落とせたとみえた向こう正面で、またピッチを上げる先導になってしまった。追走馬にも楽をさせないバランスラップ(イーブンペース)が身上なので、丹内騎手、ペースを落とさないのは予定通りだったと思えるが、1000m通過58秒6のあと、さらにペースを上げた結果、1600m通過は「1分34秒4」。これはさすがに厳しすぎた。

 4番人気のデウスウルト(父キングカメハメハ)は、春に無理使いしたわけでもなく、栗東で入念に乗って函館入りしたあとも好気配を伝えられたが、初の函館で環境慣れするのにやや時間がかかったか、輸送で減った体を回復させるのに苦心したか、当日輸送なしの滞在競馬とすればこころもち加減した調教での出走だった。道中は勝ったダービーフィズと内外に並んで進んだが、3コーナー過ぎに早くも脱落してしまった。速い時計での勝ち星が多く、洋芝(良発表のわりにタフな状態だった)も期待ほど合ってはいなかったのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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