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好スタートからレースの流れに乗り切った快勝/中京記念

  • 2015年07月27日(月) 18時00分


中京記念らしい難解な結果

 当然のように生じるはずの波乱を予測して、人気は大きく分散した。抜け出したのは6番人気のスマートオリオン(父グラスワンダー)。そこに突っ込んできたのは13番人気のアルマディヴァン(父メジロベイリー)。また今年も中京記念らしい難解な結果だった。

 1週前の日曜日は「外差し」の連続した芝コンディションは、連日の好天でインを衝いても不利のない馬場に大きく変化。7月のローカル開催のハンデ戦に、さらに想定外の要素が加わった。ハンデ戦らしく「クビ、クビ、クビ…」の差が6着までつづき、上位8着までが勝ち馬と「0秒3差」の大激戦に持ち込まれた。

 これで、荒れる中京記念の1番人気馬は通算16連敗【0-1-2-13】となり、この時期の1600mになっての連対馬は「5,6,5,13,7,11,6,13」番人気である。

 G1安田記念1600mから約1ヶ月半後の、同じ左回りのマイル重賞に移り、出走馬の全体レベルは上がることになった。だが、安田記念がどうも物足りない結果(凡走)だった馬がここに回ってくるわけで、一段と難しい要素が加わることにもなった。

 勝ったスマートオリオンは、4歳春に1200mのオーシャンSを制した重賞勝ち馬だが、全6勝が1400m以下であり、芝1600mの経験なしはこの馬だけ。M.デムーロ騎手を配し、素晴らしい調教をみせ、デキの良さは特注。しかし、一連のレース内容からハンデ57キロは重い印象もあった。好スタートからレースの流れ「前半46秒4-後半47秒0」に素早く乗り切り、予想以上の速い時計になった芝コンディションが大きな味方となったのだろう。前回、初めて芝1400mを勝った勢いをもっと高く評価すべきだったということか。

 2着に突っ込んできた伏兵アルマディヴァンは、ヴィクトリアマイルを15着に大敗のあと、スマートオリオンの勝ったパラダイスS1400mも8着止まり。中間の動きの良さと、得意の左回りで、少し時計のかかる追い込み競馬になるなら……。もつれそうな展開と、軽量52キロの大駆けに期待した人びとの期待にこたえた。重馬場のエリザベス女王杯を7番人気で差し切ったレインボーダリアのいとこで、母の父にメジロライアンを持つメジロベイリー産駒。13番人気が妥当だったろう。中京記念は、こういう伏兵の台頭を歓迎してしまうのである。

 人気上位馬で好走したのは、3番人気で3着に突っ込んだダローネガ(父ダイワメジャー)だけだった。4歳夏の条件再編成で1600万下に降級のあと低迷していたが、ようやく腰の甘さが解消して前回1600万下を快勝。再びオープンに巻き返してきた上昇馬である。大跳びのフットワークが持ち味だけに、先週の荒れた馬場が回復して切れの生きる良馬場になったのが良かった。もともと夏の高速コースに良績があるから、この夏の特注馬の1頭はこの馬。

 最終的に1番人気に支持されたカレンブラックヒル(父ダイワメジャー)は、評価の非常に難しいマイラーで、相手が本当に強化した3歳春以降、制した1600m重賞はNHKマイルC「1分34秒5」と、ダービー卿CT「1分34秒6」の2つ。1分32秒台の速い時計の記録は3回あるが、それは勝ち負けには加われなかったときの記録である。今回、58.5キロのハンデを課せられていただけになんともいえないが、週中に予測された先週と同じような芝コンディションではなく、馬場が予想外に良くなってしまったのが敗因か。自分のリズムで先行できなかった。

 2番人気のレッドアリオン(父アグネスタキオン)は、58キロの安田記念をもまれながら1分32秒7で8着に善戦。57.5キロの今回は、外に回りたい同馬にとって不利のない外寄りの11番枠。ところが、出足が悪く最初から流れに乗れなかった印象が濃い。

 昨年は、ずっと不振だったサダムパテックが、安田記念7着(17番人気)を契機に復活するように本来の力量発揮に成功。7番人気で中京記念を制したが、今年のカレンブラックヒルと、レッドアリオンは、春の最大目標だった安田記念を、前者は7着(9番人気)、後者は8着(7番人気)。ほぼ能力通りの結果で、力を出し切っていたともいえる。でも、物足りないから気を取りなおしてここに回ってきたが、安田記念以上の状態は難しかったのは否定できない。

 昨年、快走したのは安田記念組の人気薄サダムパテック。今年、凡走したのは安田記念組の人気馬カレンブラックヒルと、レッドアリオン。この時期の1600mに変わった中京記念のポイントは、天候によって全国のどこの競馬場より大きな馬場差が生じる「芝コンディション」と、「安田記念組」の評価ということになる。

 4番人気の伏兵オリービン(父ダイワメジャー)は、多頭数の内枠が良くなかったか、もまれてジリ下がりになってしまった。一転の復活を期待したメイケイペガスター(父フジキセキ)は、出負け気味なので気合を入れたら、やっぱり行きたがってしまった。無理に抑えず行かせたのは仕方がない。あれでいいと思える。あのペースで勝手に止まっては仕方がない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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