▲今月は北橋修二元調教師をお招きしての師弟対談、お互いの秘めた思いをここだけで語る
普通の家庭で父親がするようなことをすべて先生が
福永 先生、今日はお忙しいところありがとうございます。今、netkeibaで僕の半生を振り返るコラムを連載しているんですが、先生と親父がどういう関係にあって、どうして先生が子供の頃から自分を可愛がってくれていたのか、肝心の原点をよく知らないことに気づいたんです。家族ぐるみのお付き合いをさせていただくようになったのは、親父がケガをしてからですか?
北橋 いや、きっかけは日迫清(元調教師)さんや。そもそも、日迫先生とわしの師匠(松元正雄元調教師)が兄弟のように仲が良くてね。それで、わしも可愛がってもらうようになって。
福永 それで先生の奥さんと日迫先生の奥さんも仲が良かったんですね。で、日迫先生の奥さんは、うちの母方の祖母のお姉さんで…。
北橋 そうそう。だから、姪にあたる裕美子ちゃん(福永の母)も日迫家に出入りしとったわけ。
福永 そこに麻雀をしにきていたのが親父で、母を見初めたっていう話を聞いたことがあります。
北橋 そうや。それで、洋一と裕美子ちゃんをくっつけようっていうことになったんや。
福永 じゃあ、先生と親父のつながりも結婚前からなんですね。
北橋 うん。なんせ13も年が離れとったから、一緒に飲み歩いたりっていうのはなかったけど、よく麻雀をしにウチに来ていたわけ。ある日、麻雀をしているうちに腹が減ったんやろうね。うちの女房に洋一が「マーちゃん、腹減った! うどん!」って言い出した。そうしたらうちの女房が、「洋一くん、うちではそれでも通るけど、人に何かを頼むときは『お腹がすきました。何か作っていただけませんか?』と、ちゃんと言わなきゃいかんよ」って叱ったの。
福永 ああ、その話は聞いたことがあります。
北橋 リーディングジョッキーという地位にいる男が、怒られたわけやからね。わしはもう来ないと思った。でも洋一は、次の日も麻雀をしにやってきた。それで、「マーちゃん、お腹がすきました。すみませんが、うどんか何かを作ってもらえませんか?」って言ったの。それを聞いてね、ああ、この男は大したもんやなと。普通はもう来んよ。その出来事をきっかけにね、余計に親しくなったんや。