◆「間違いなく成功する」と太鼓判
右前繋部浅屈腱炎を発症し、20日に電撃引退が発表された2013年のダービー馬キズナ(牡5)。18日に栗東トレセンに帰キュウした時は元気の良さそうな姿を見せていただけに、まさに急転直下。佐々木晶三調教師も「馬は分からないものだね」と嘆くばかりだ。
父ディープインパクト譲りの切れ味がもうレースで見られないと思うと寂しい限りだが、今後は種牡馬として第2の馬生がスタートする。父キズナという血統表を持つ馬が出てくることを思えば、それはそれで楽しみだ。SS系の一流サイアーが多数いる中、種牡馬競争に打ち勝っていくのは容易ではないが、佐々木調教師は種牡馬キズナについて「間違いなく成功する」と太鼓判を押す。その根拠は同馬の持つ性格だそうだ。
「これだけ物事をわきまえた馬というのはいない。トレセンにいる時はヤンチャをして大変なのにパドック、馬場入り、返し馬…レースにいって苦労したことは一度もないんだ。馬が普段とレースというものをしっかりと区別している証拠。それだけ精神面がしっかりしているんだよ」
3歳時に凱旋門賞挑戦(4着)でフランス遠征した時は、飛行機でオランダのアムステルダムまで輸送され、そこから陸路で約8時間をかけて仏シャンティイ入りした。
「あの時も輸送熱ひとつ出さず、現地の馬房に入るとすぐにカイバをバリバリ食べていた。慣れない環境に置かれながらたいしたもんだと思った。メンタル面があれだけしっかりしているということは種牡馬になっても必ず生きてくる」
父にディープインパクトを持つサイアーの中でも今後、旗手となるのはやはりこの馬。キズナ産駒が国内GI、そして凱旋門賞に挑戦する日が来ることを待ちたい。
(栗東の坂路野郎・高岡功)