価値のある前走の内容
出走馬「13頭」のうち、「10頭」までが種牡馬ディープインパクト産駒。残る3頭は、アグネスタキオン、ダンスインザダーク、フジキセキの産駒なので、すべての出走馬が「サンデーサイレンス直父系の孫世代」という組み合わせが成立した。
人間や、他の生物ふうに表現すると、ディープインパクトの息子が10頭に、それらと「いとこ」の間柄になる馬が3頭で、息子たち(兄弟)と、そのいとこたちだけによる身内のレースである。
脱線。これに近いことが想定できたから、サラブレッドは「牝馬」を系図のベースにしてスタートしたのかもしれない。ディープインパクトの息子たち10頭は、そのうち5頭の母親が外国からの輸入牝馬であり、たまたま近親馬ではないから、10頭はちがう家系の他人であり、残る3頭もいとこではない。10頭の息子たち、自分たちは同じディープインパクトを父に持つ兄弟であることに気がつくのだろうか。気がつかないと思える。なぜなら、サラブレッドは交配時からして、父親がだれであるかを、母になる牝馬さえ、種牡馬がだれかを知らない。サラブレッドの種牡馬は、生産の主役であっても、その姿を相手になる牝馬や、まして約1年後に生まれてくる産駒たちになど決して知られることのない闇の中の黒子である。
産駒と一緒に過ごす時間がないどころか、おそらく終生1回も会うことはない。サンデーサイレンスの産駒は父親の激しい気性を受け継ぎ、「ちょっと気性の難しい馬が多い」などといわれたが、会うこともないのに、ホントに気性の激しさは遺伝するのだろうか。気性(性格)は遺伝しないという説も存在する。10頭のディープインパクトの息子たち、自分たちが兄弟であることにさえ気がつかないのに、ディープインパクトの気性を受け継いでいるのだろうか。10頭の息子たち(兄弟)のうち、だれか1頭くらい、ただの仲間ではなく、同じ父親をもつ特別な間柄であることを、動物の本能で察知するのだろうか。
ただ1頭、休み明けではなく、札幌記念を制して一段とパワーアップしている
ディサイファ(父ディープインパクト)に期待したい。辛勝に見えたが、札幌記念の中身は「58秒9-60秒1」=1分59秒0。先行したディサイファには道中で息の入れにくい厳しい流れで、追いすがってきた2-4着馬はすべて差し馬。意識的に正攻法の先行策を取って、しのぎ切った内容は価値がある。平均ペースでレースを先導すると思える
エイシンヒカリを射程に入れて進み、ベテラン策士四位騎手の、開幕週の芝を利したインつき作戦に期待したい。相手妙味は、同じディープインパクト産駒で切れ味に勝る上がり馬
ヴァンセンヌだろう。