牝馬には心配なスタンド前発走もタッチングスピーチなら大丈夫そう/トレセン発秘話
◆ポテンシャルをきっちり発揮してくれそう
恥ずかしながら、この年になって“パドックの真実”を初めて知った。構造上、観客の声が反響しやすく馬がイレ込みやすい競馬場と、その逆があるということ。また、同じ馬の周回でも、観客側を歩く時とオッズ掲示板側を歩く時では馬のテンションが違うこともあるそうだ。
「やっぱり馬も大勢の人の近くに行くと、気になってしまうことがあるからね。その一場面だけでイレ込んでいると言われても…。反対側を歩く時はスッと落ち着いていたりすることもあるよ」
こう説明してくれたのは石坂キュウ舎の桑村光史助手だ。競馬場の造り、大勢のファンの圧迫感、声の反響…もろもろの状況を踏まえて馬の気配を見なければいけないのだとしたら、パドックでの馬見というのも簡単な作業ではない。
今週末に行われるGI秋華賞は京都芝内回り2000メートルでの施行。コーナー4つ、直線の短さなどに注目が集まるが、ひょっとしたらそれ以上に重要な“地点”はスタートの場所かもしれない。オークスと同じくスタンド前からの発走。繊細な牝馬のGIで大勢の観客の前、歓声や圧迫感を間近に感じながら気持ちを平常に保つことができるかどうかは、レースの大きなポイントと言える。
「ノンビリしておとなしいのがこの馬のいいところ。ディープっぽくないというのかな。そのあたりは母系が出ているんだろうね」
こう語るのはタッチングスピーチを秋華賞に出走させる前出の桑村助手。初のGI挑戦。それでもこの馬の普段の落ち着きぶりならスタンド前の発走も難なくこなして、ポテンシャルをきっちり発揮してくれそうな気がする。
(栗東の坂路野郎・高岡功)