もともと菊向きタンタアレグリア 最強相棒蛯名/トレセン発秘話
◆1週前追い切りについて中村助手「こんなに動くのかっていうぐらい、いい動きでした」
バイプレーヤーとして息の長い活躍をしたウインバリアシオン。飛躍のキッカケになったのは3歳春の青葉賞だろう。後方一気の激勝を決め、その後はGI戦線で安定したレースぶりを見せるようになった。
デビュー2連勝を飾ったものの、やや低迷が続いた後での青葉賞の変わり身…。管理した松永昌調教師は、その要因を「もちろん能力があったからこそ」と端的に説明した上で、「デビューしたころは緩さが目立っていたけど、使いながら、だんだんしっかりしたというのもあったね。あとは長丁場に適性があったのも要因のひとつだろう」と補足した。
ダービーと同じ舞台で行われる前哨戦ながら、今まで一度もダービー馬を出したことがない不思議なトライアル・青葉賞。その性格は、ウインバリアシオンのように緩さなどがあって早期にクラシックの賞金を加算できる完成度はないものの、高いポテンシャルを持った長距離適性のある馬が活躍する、ということになるのかもしれない。
だとすれば、リンクするのはダービーよりも菊花賞。今年の青葉賞2着馬タンタアレグリアは、まさにその典型と言っていいのではないか。幼さ、緩さを抱えながらで、なかなか賞金を加算できずにいたが、ポテンシャルの高さ+長距離適性で気を吐いた。
「もともとキュウ舎内でも“菊花賞向き”って声が大きかった馬ですからね。まだまだ緩さはありますけど、悪い緩さじゃない。レースでかかることは、まずないし、スタミナもある。だから今回は、ちょっと楽しみなんですよ」とは中村助手。1週前追い切り(栗東ウッド6ハロン83.2-12.8秒)も抜群だったようで、「こんなに動くのかっていうぐらい、いい動きでした。抜け出してからも最後までしっかり走っていたし、春より気持ちが前向きになってます」。
ちなみに、タンタアレグリアに騎乗する蛯名は実に頼もしいパートナー。京都の長丁場GI(菊花賞、天皇賞・春)で抜群の勝負強さを発揮しており、複勝率では武豊(46.8%)に迫る46.2%。しかも1番人気の騎乗はゼロで築いた好成績なのだから、すごいというほかない。
いかにも菊花賞向きの馬に、淀の長距離が抜群にうまい鞍上…混戦といわれる今年の菊花賞を制するのは、蛯名騎乗のタンタアレグリアかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)