藤沢師が大根田師に感謝の握手「カジノドライブの子よく走っているな。ありがとう」/吉田竜作マル秘週報
調教師席で顔を合わせるなり、藤沢和調教師が満面の笑みで握手を求めてきた
調教師からすれば、管理した馬は我が子のようなもの。「苦労させられた子」ほど、かわいかったりするものだ。いつもお世話になっている松田博調教師も、昔話は「手を焼いた話」になることが多く、例えば「ハープスターの札幌記念は正直なところ間に合わないと思った。牧場で見たらガタガタだったんだ」といった感じに…。やはり心配や苦労が多かった馬ほど、強くトレーナーの心に刻まれるのだろう。
ナガラオリオンの東京遠征(メーンのグリーンチャンネルCに出走)に立ち会うため、大根田調教師が東京競馬場へと足を運んだ時(12日)のこと。調教師席で顔を合わせるなり、藤沢和調教師が満面の笑みで握手を求めてきたという。「カジノドライヴの子、よく走ってるな。ありがとうって」
2015年デビューの新種牡馬として好調な滑り出しを見せているカジノドライヴは現役時代、藤沢和キュウ舎に所属し、08年に米国遠征を敢行。ピーターパンSを制し、BCクラシックにも出走(12着)した。兄姉にGIウイナーがいるように血統も超一流だが、恐らくはファンが思っている以上に、陣営には苦労が多かったはずだ。もちろん、海外遠征に伴うものもそうだろうが、一番の苦労は脚元に関してではなかったか。
米国遠征後にJCダート参戦のため、阪神競馬場で検疫を受けながらの調整を続けていたカジノドライヴ。記者はその取材のため何度となく早朝の仁川まで足を運んだ。初めて間近に馬を見た時に驚かされたのが、その繋ぎの角度。極端に言えば、バレリーナがトゥシューズを履いて、爪先立ちしているかのよう。そんな状態で常に歩き、走っていたのだ。この業界の人間からすれば“長くは持たない”シルエット。最終的に屈腱炎で現役生活を断たれたように、やはり脚元への負担は大きかったに違いない。
一方で見方を変えれば、先天的な不安を抱えながらも海外遠征を敢行して米GII勝ち、国内でもGI2着(09年フェブラリーS)と実績を積み上げてこられたのは、ひとえに藤沢和キュウ舎のスタッフが脚元のケアに腐心してきたからだろうし、藤沢和調教師の“愛着”が強くなるのも自然なこと。それが大根田調教師への握手と感謝の言葉につながったのだろう。
藤沢和調教師もその動向を注目している大根田キュウ舎のカジノドライヴ産駒。新馬→500万下(ヤマボウシ賞)を連勝したプレスティージオ(牡=母スーリア)は「さすがに2歳馬だから、中1週での競馬は、しんどかったみたい。疲れが出たのでひと息入れる。ダート路線なら慌てて使うこともないからな」(大根田調教師)とのことで、現在は放牧に出ているが、同産駒のヴェンジェンス(牡=母スペシャルクイン)は日曜(25日)の京都500万下、なでしこ賞(ダ1400メートル)に出走予定だ。
「センスがいいプレスティージオに対して、ヴェンジェンスはいかにも粗削り。調教でもレースでも若いというか、山賊みたい(笑い)。いや言葉が悪いか。野武士のようだよ。ただ、それだけ伸びシロも感じるし、馬力からいっても、まだまだ上を目指せると思う」
藤沢和調教師にとってのカジノドライヴがそうだったように、カジノ産駒のこの2頭が大根田調教師にとって特別な愛着を持つ馬になるのかどうか。まずはプレスティージオに続いて無傷の連勝を目指す、なでしこ賞のヴェンジェンスの走りに注目してほしい。