どこで相まみえるか今から楽しみ 2頭のスピネル対決/吉田竜作マル秘週報
それぞれのオーナーが全く違った意図で命名した“スピネル”なのだが…
馬名によく使われるのが冠号。有名どころはアドマイヤ、アグネス、メイショウといったところか。人の姓名と一緒くたにしてはいけないのだろうが、「冠号=名字」で、「(続く)馬名=名前」と感じてしまうのは記者だけ?
で、人でいうところの“名前”の部分にははやり廃りがあったりする。その時々ではやったキャラクターものであったり、スポーツであったり。例えばイチローがメジャーで活躍し始めたころはイチロースワンという馬がいたり、「雪の早明戦」のころには(冠号こそないが)スクラムトライ、ラグビーボールなどラグビーにまつわる馬名も見られたりした。もちろん、これからでいえば「五郎丸」が鉄板…って、前置きが長くなったが、ここからが本題――。
冠号を別にしたそれ以外の部分が、はやりもの以外のことでかぶるケースはそうはない。ましてそのかぶった2頭が世代を代表する馬になることは…。現2歳世代はその“まさか”が起きようとしている。
その2頭とは先日の萩Sを制したブラックスピネル(牡・音無)と、土曜(14日)のGIIデイリー杯2歳S(京都芝外1600メートル)で人気を集めるエアスピネル(牡・笹田)だ。この2頭のスピネル、前者は「尖晶石(鉱物の一種で宝石に加工される)」、後者は「タイに伝わる伝説の竜の形をした馬」が馬名の由来。それぞれのオーナーが全く違った意図で命名したものなのだが…。2頭が順調に成長していくようなら、大舞台での“スピネル対決”は避けられまい。
まずはブラックスピネル。萩Sの3/4馬身差勝ちを「相手もそれなりに伸びていたんでしょうが、こちらもまだ余裕があった。どこまで来ても抜かれないと思いました」と振り返ったのは松若。パートナーに絶対的な信頼を寄せている。一方で管理する音無調教師は「あれだけではまだ何とも」と前置きしながらも、「オーナーサイドが何か言ってこないうちは、このまま(松若)風馬騎乗で」と愛弟子とのコンビに向ける期待を隠せない。
次走はGIIホープフルS(12月27日=中山芝内2000メートル)を予定。「賞金を加算できたので、来年の皐月賞トライアルまで気を使わなくて済むのがいい。コーナー4回の競馬をどうこなすか。次が試金石」と指揮官は早くも来年をにらんでいる。
一方のエアスピネル、新馬戦(阪神芝外1600メートル)2馬身差快勝は鮮やかだったが、中間の坂路の動きも桁違い。10月28日に4ハロン53.0-11.9秒、4日は50.8-12.2秒。数字だけでも2歳馬離れしているのは分かるが、「ホントすごい動き。能力があるのは間違いない」と笹田調教師もゾッコンだ。
エアスピネルの母エアメサイアは笹田調教師の義父・伊藤雄調教師晩年の傑作。自身も調教助手として携わっていただけに思い入れも強いのだろう。
「ここで結果が出れば朝日杯FS(12月20日=阪神芝外1600メートル)に向かうことになると思う。(年内は)マイルを続けて3走することになるけど、競馬で折り合いに不安がある馬ではないから。距離は持つはずだし、クラシック路線に乗せなきゃいけない馬だと思っている」
2頭のスピネルがどこで相まみえるのか。両雄が並び輝く一戦が今から楽しみでならない。