◆今後進んでいくであろう競馬場でのキャッシュレス化
前回は馬券の払戻率について書いたが、今回はネット投票におけるポイントなどの特典について触れてみたい。
馬券のネット投票では、投票額に応じてポイントを付与し、様々なもので還元するサービスが盛んに行われている。ときに特定の日や特定のレースでポイント還元率アップということもある。また、各地の名産品を抽選でプレゼントしたり、高額投票者には競馬観戦ツアー招待などを実施しているところもある。
現在ではネット投票に使える銀行口座と、パソコンやスマホなどネットが使える環境があれば簡単に会員になれるので、会員をつなぎ留めておくため、またより多くの額を投票してもらうため、ネット投票事業者はそれらのサービスにも相当に力を入れているようだ。
現在では地方競馬でも馬券の売上に占めるネット(電話も含む)投票の割合が5割を超えた。一昨年度あたりからほとんどの主催者で前年対比で馬券の売得額が100%を超えているのは、ネット投票の伸びによるところが大きい。
ただネットでの売上ばかりが伸びるのは、主催者にとっては痛し痒しという状況でもあるようだ。競馬主催者はさすがにそれを声高には言わないが、「ほんとは競馬場で買ってほしいんですよねぇ」というボヤキはよく聞くことがある。競馬場や直営場外での売上なら、売上から的中馬券(および特払い)を払い戻した残りの額がすべて主催者の収入になるが、ネット投票では売上の一定割合額が発売手数料としてその事業者に流れてしまうからだ。
地方競馬には、まだまだ実馬券しか買わない、ネット投票の手段を持たないというファンも少なくないが、時代が進めばネットに抵抗のない人達の割合が確実に増え、つまりは馬券発売もさらにネットに移行していくと思われる。ポイントを稼ぐために、競馬場に行っても馬券はスマホで買うというファンもすでにかなりいるはずだ。その状況が進めば、馬券の売上が増えても主催者の実入りはほとんど増えない、ということにもなりかねない。
できるだけ競馬場で馬券を買ってもらうためには、競馬場で買った馬券にも何かを還元するということが必要だろう。一定額以上の実馬券を見せて、抽選で何かをプレゼントするということはすでに行われているが、買った個人が特定できない実馬券でポイントのようなものを付与するのは難しい。
それを実現したのが、大井競馬場の新スタンドG-FRONTのキャッシュレス投票なのだろう。会員登録(無料)すると発行されるTCK PREMIUM CARDを使っての投票なので、個人も特定できるし、データ上での処理なのでポイントの付与も簡単だ。溜まったポイント(ハロン)は、馬券を購入できる投票用電子マネーや、オリジナルグッズと交換できる。そのキャッシュレス投票で馬券を買えば、実質数%の割引で馬券を買っていることになる。ちなみに1日限りの会員にもなれるが、その会員にはポイントは付かない。
地方競馬では、大井に先駆けて2014年7月に高知競馬場でキャッシュレス投票のシステムが稼働している。高知ではポイントなどのサービスは実施されていないようだが、キャッシュレス端末での投票による抽選会などは行われている。
また川崎競馬でも今年度の経営計画に、キャッシュレス投票の導入が上げられていた(実施時期については明記されていない)。
主催者としてのメリットを考えると、今後競馬場(他の公営競技も含めて)での馬券発売もキャッシュレス化が進んでいくのだろう。さらにその先には、キャッシュレス投票カードの競馬場同士での共通化ということも期待したい。