クラシックへ過酷な賞金争い レッドアヴァンセの場合/吉田竜作マル秘週報
音無調教師は「自己条件に回る手もあるが、遠回りしてはいられない」
先週の当コラムで取り上げた香港C勝ち馬エイシンヒカリの全妹エイシンティンクル(父ディープインパクト、母キャタリナ・坂口)は「物音や他馬に敏感なところはあるけど、思っていた以上に順調にきています。日に日に環境に慣れてきたというか、おとなしくなっていますね。この感じなら今週ゲート試験を受けるかもしれません」と坂口助手。もちろん、「稽古を強めてから、うるさくなるかもしれない」不安はついて回るが、まずは最初のハードルをクリアできそうなところまできた。予想以上に早くデビューとなれば、本当に牝馬クラシックの“秘密兵器”になるかも…。
とはいえ、この時期の未デビュー馬はクラシック、こと桜花賞、皐月賞については“絶望的な状況”と言えるくらい厳しい。現1勝馬にしても綱渡りといったところだ。
9日に牝馬限定の未勝利戦(京都芝内1600メートル)を勝ち上がった同じくディープ産駒の良血レッドアヴァンセ(音無)はエルフィンS(2月6日=京都芝外1600メートル)に向かう予定。「自己条件に回る手もあるが、遠回りしてはいられない。負ければ厳しくなるけど、勝てばグッと楽になる」と音無調教師は一気に桜花賞出走を確定させる賞金を取りにいく。
「オープンのマイルなら直線の長い外回りコースになるからね。長くいい脚を使うこの馬にとっては自己条件の内回りより走りやすいはず。鞍上は(ミルコ)デムーロもルメールもふさがっているので、本番まで見据えて武豊にお願いした。経験のある騎手だし、こちらも楽に見ていられる」
トレーナーは楽観的に構えるが、果たして思惑通りにいくか注目だ。
一方、同じく現1勝ながらジュエラー(藤岡)はシンザン記念2着で賞金加算に成功。そればかりか、一気に牝馬クラシック戦線の中心に名乗りを上げた。
「勝負どころで他馬を気にしたのか下がってしまった。“とてもじゃないが届かない”と思ったところからあの脚だからね。価値あるレースだったと思う」と藤岡調教師。
レース後はすぐさま山元トレセンへ。「賞金も加算できたし、この後はトライアル…恐らくチューリップ賞になると思うけど、そこから桜花賞へ進む予定。その先にはオークスもあるからね。そこまでずっと走り続けなければならないことを思えば、ここでひと息入れられるのは大きい」と放牧の狙いを明かす。
牝馬クラシックの場合は1600→2400メートルという一気の距離延長がより戦いを過酷なものにする。来るべき激戦に向けて少しでも負担を減らすことができれば、権利取りなどで四苦八苦するライバルに対して大きなアドバンテージに。ジュエラーはそれを手にしたと言っていい。
半姉ワンカラットはブエナビスタという強固な壁にはね返されたが、ジュエラーのライバルは現時点では2歳女王メジャーエンブレム(田村)くらいなもの。昨年暮れの有馬記念のサウンズオブアース(2着)はじめ、GIではあと一歩ではね返されてきた藤岡厩舎だが、この春は願ってもないチャンスが巡ってくるのではなかろうか。