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ダービー2着馬が好き

  • 2016年01月23日(土) 12時00分


 今週のアメリカジョッキークラブカップに、昨年のダービーで2着になったサトノラーゼンが出走する。ダービーのあと、1番人気で迎えた秋初戦のセントライト記念は7着、3番人気に支持された菊花賞は5着に終わり、ここが年明け初戦。初コンビとなるフランシス・ベリーを背に、どんな走りを見せてくれるだろうか。

 スマイルジャックを贔屓にしている私は、ほかのダービー2着馬に対しても特別な思い入れを抱いてしまう。

 よく言われているように、ダービー2着馬は、ダービーのあと、ダービー馬に匹敵するかそれ以上に活躍することがままある。

 ということで(前に同じようなことをやったような気もするが)、過去10年のダービー馬とダービー2着馬を列挙してみる。

2015年 ドゥラメンテ サトノラーゼン
2014年 ワンアンドオンリー イスラボニータ
2013年 キズナ エピファネイア
2012年 ディープブリランテ フェノーメノ
2011年 オルフェーヴル ウインバリアシオン
2010年 エイシンフラッシュ ローズキングダム
2009年 ロジユニヴァース リーチザクラウン
2008年 ディープスカイ スマイルジャック
2007年 ウオッカ アサクサキングス
2006年 メイショウサムソン アドマイヤメイン

 このなかで、ダービー後にもGIを勝ったダービー馬は、新しい順にオルフェーヴル、エイシンフラッシュ、ウオッカ、メイショウサムソンの4頭。ダービー後にGIを勝ったダービー2着馬も4頭で、エピファネイア、フェノーメノ、ローズキンダム、アサクサキングスとなっている。

 特にオルフェとウオッカの活躍が華々しかっただけに、過去10年に関しては、ダービー後も、ダービー馬のほうが2着馬より存在感を誇示しつづけた、と言えそうだ。

 ちなみに、ダービー後未勝利のダービー馬は、休養中のドゥラメンテ、ダービー後のキングジョージを最後に引退したディープブリランテ、脚部不安などで休養期間が長くなったロジユニヴァースの3頭。ダービー後未勝利のダービー2着馬は、サトノラーゼンとアドマイヤメインの2頭だけ。

 さらにさかのぼり、過去11年から20年までのダービー1、2着馬を見ると――。

2005年 ディープインパクト インティライミ
2004年 キングカメハメハ ハーツクライ
2003年 ネオユニヴァース ゼンノロブロイ
2002年 タニノギムレット シンボリクリスエス
2001年 ジャングルポケット ダンツフレーム
2000年 アグネスフライト エアシャカール
1999年 アドマイヤベガ ナリタトップロード
1998年 スペシャルウィーク ボールドエンペラー
1997年 サニーブライアン シルクジャスティス
1996年 フサイチコンコルド ダンスインザダーク

 ダービー後もGIを勝ったダービー馬は、新しい順にディープインパクト、ジャングルポケット、スペシャルウィークの3頭。それに対し、ダービー後にGIを勝ったダービー2着馬は、ハーツクライ、ゼンノロブロイ、シンボリクリスエス、ダンツフレーム、エアシャカール、ナリタトップロード、シルクジャスティス、ダンスインザダークと8頭もいる。

 なお、ダービー後未勝利に終わったダービー馬は、タニノギムレット、アグネスフライト、サニーブライアン、フサイチコンコルドの4頭。ダービー後未勝利のダービー2着馬はボールドエンペラーだけだ。

 この期間に限って言うと、3歳春の成長期に行われるダービーの厳しさが出ているように思う。負荷の大きな戦いで頂点に立ったことで、キャリアの終わりを早めることになったダービー馬がいて、その結果、ダービー2着馬のほうが、総じて息の長い活躍ぶりを見せることになった。

 私がダービー2着馬を好きになってしまうのは、贔屓のスマイルジャックがダービー2着になったから、というのももちろんあるが、順番からすると、「好きなダービー2着馬に、贔屓のスマイルがなってくれて、余計に肩入れするようになった」と言うほうが正しい。

 私は昔から、なぜか「2番目」が好きだった。仮面ライダーなら1号より2号、秘密戦隊ゴレンジャーならアカレンジャーよりアオレンジャー、ピンクレディーならミーよりケイ、80年代終わりの芦毛対決ならオグリキャップよりタマモクロスを応援していた。最初に好きになった騎手も、実は、同じ長身でも武豊より田原成貴だった。

 1番になれない悲哀だとか、追い越さなければならない相手がいる焦燥だとか、そうしたものを感じさせるキャラクターに、どういうわけか魅力を感じてしまうのである。

 こんな妙な好みのヤツに「好きだ」なんて言われたくないかもしれないが、話にならないほど弱い者は嫌いなので、判官贔屓というわけではない。潜在能力ではトップを超えているかもしれない2番手ってカッコいい、と思ってしまうだけだ(やっぱり変か)。

 さて、去年のダービーで上位に来たほかの馬を見てみると――。

 2月14日の京都記念でダービー3着馬サトノクラウンが年明け初戦を迎え、2月28日の中山記念でダービーを含む二冠馬ドゥラメンテが復帰し、そこにダービー4着のリアルスティールのほか、先輩のイスラボニータ、ロゴタイプなども出走を予定しているというから、今から楽しみだ。

 最後に、イベントの告知をひとつ。

 根岸ステークスが行われる1月31日の日曜日、東京競馬場の競馬博物館で「根岸競馬場開設150周年記念スペシャルトーク」が催される。出演するのは馬事文化財団の秋永和彦学芸員と私。昼休みの午前11時50分ごろから始まり、フェブラリーステークス当日の招待席(2組4名様)のほか、三冠馬をテーマとした卓上カレンダー、顕彰馬のクリアファイル、ボールペンなどが入った「競馬博物館オリジナルグッズ詰合せ(10名様)」が当たる抽選会もある。

 気軽なカルチャー講座といった感じなので、「根岸ステークスの『根岸』って何だ?」といった話に興味のある方は、ぜひどうぞ。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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