アスカノロマンとディサイファの勝利に
こんな言葉を目にした。「志(こころざし)は三か月不変なれば本物になれる」と。孔子の門人の中で顔回だけがひとつの心を三月の間も持ち続けられたが、他の者は、日に一度か月に一度くらいしか仁の心になり得ていないとも書かれてあった。ひとつこうありたいと志を立てたら、一途にやり続けるという心にも通じる。その、こうありたいという思いの中には、あくまでもそれは願望かもしれないが、そうなる筈という確信を探る思いがある。その一途さが成就することもあるので、人はやるだけはやってみようとする。そのいい例のひとつに競馬も含まれる。
一頭の競走馬は、人の強い思いを背負って走る。競走馬として完成する時期は、その馬によって異なる。東海ステークスで初めて重賞を勝ったアスカノロマンは、正にこれからが完成のとき。これまでは、一度実戦を使うと一気に消耗してしまうので、目標を前に力を使い果たすをくり返していた。能力は高い、これで手加減せずに準備できるようになればという確信を探る思いが続いていたのだ。それが昨秋あたりから立ち直りが早くなり、手応えを感じている中での今回の勝利で、すっかりこの馬としての完成期が見えてきた。ゆっくり成長してきたアスカノロマン、7度目の重賞戦でステップアップできたのだった。層の厚いダート界にあって、ここで得た賞金は大きく、これからは出たいところに出られる。
アメリカJCCを勝ったディサイファにも同様のことが言える。こちらは如何にも大器晩成で、早くからこれは走ると期待されていたが、勝負どころで淀んでしまう走りからレースで苦しい情況が続いていた。それでも無理はさせず、じっくり成長する期を待ち続けてきた結果、今日を迎えることができたのだ。気負うことなく滑らかに力強いケイコができるようになったのは、何よりも馬体がしっかりしてきたことによる。好スタートを切ったことで、武豊騎手が思っていた位置取りができ、勝負どころでは自ら動いて行き、見違えるような走り方だった。次はどうする、そんな思いを強くする。いよいよ本物になれる。ドバイか香港か、その先の国内のGIか、こうありたいという思いが届くところまできている。