ダービー馬らしい走りを見せてほしい 橋口弘師の“宝物”ワンアンドオンリー/トレセン発秘話
◆担当の甲斐助手「先生の喜ぶような、この馬らしい、格好いい走りを見せたいし、見せてほしい」
松田博資厩舎のレーヴミストラルと橋口弘次郎厩舎のワンアンドオンリーが出走するGII京都記念(14日=京都芝外2200メートル)は、定年を間近に控えた名トレーナー同士の激突という“裏カード”も楽しみである。両馬とも現厩舎では最後の一戦となるだけに仕上げもメイチ?
レーヴミストラルの場合は、すでに1月の日経新春杯を勝っており、松田博調教師自身、この京都記念への出走については「2回続けてちゃんと走るか見てみたい」と。そこまでの勝負気配は感じさせていない。
勝負気配だけで言えばワンアンドオンリーの方がはるかに上だろう。日本ダービー制覇以降は、秋の神戸新聞杯こそ勝ったが、その後は実に9戦勝ち星なし。常々「恵まれてダービーを勝ったとは言われたくない」と口にしている橋口弘調教師にとって、このまま引き下がれるはずもない。
「ワンアンドオンリーは先生の宝物。先生にとっては今回がこの馬の最後のレースというのもあるし、先生の喜ぶような、この馬らしい、格好いい走りを見せたいし、見せてほしい」と担当の甲斐助手は言う。
恵まれただけのダービー馬ではないのは、レースをしっかり見ている人には分かるはず。2走前のジャパンCは直線でラブリーデイ(3着)に押し込まれ、その後もゴチャつきながら、あきらめずに伸びて0秒3差(7着)。前走の有馬記念にしても「位置取りが後ろになったし、直線でも窮屈になって力を出し切れなかった」(甲斐助手)うえでの0秒5差(9着)。器用ではないため、スムーズさを欠くことが多いのだが、半面、明確に力負けしたレースが少ないのも事実なのだ。
「通算1000勝よりも、ワンアンドオンリーがダービー馬らしい走りを見せてくれたら、先生もそれでいいんじゃないですか」(甲斐助手)
確かにその通り。厩舎1000勝(すでに実現の難しい数字になってしまったが…)よりも何よりも、悲願のダービータイトルをプレゼントしてくれた“厩舎の至宝”ワンアンドオンリーの誇りが汚されないことが、橋口弘調教師にとって一番の希望のはず。
坂路野郎も、そろそろこの馬の本気の走りを見てみたい。
(栗東の坂路野郎・高岡功)