競馬の神様が微笑む 橋口弘師最後の重賞/トレセン発秘話
◆小牧太ジョッキーは自身主催の引退慰労会にて「阪急杯で泣く準備はできています」
今年で第60回を数える阪急杯の長い歴史の中で、語り草になっているのが2006年。この日(2月26日)を最後に騎手を引退した松永幹夫(現調教師)を鞍上に、ブルーショットガンが11番人気で激走V。おまけに松永幹は続く最終レースも勝って、最後の最後で区切りのJRA通算1400勝を達成。「今回ばかりは競馬の神様っているのかなと思った」という名言を残している。
今年も“競馬の神様がいてほしい”と思わずにはいられない。今月いっぱいで解散となる橋口弘次郎厩舎にとって、日曜(28日)のGIII阪急杯(阪神芝内1400メートル)に出走するミッキーラブソングがラスト重賞になるからだ。
いや、すでに競馬の神様の加護はあったと言えるのかもしれない。収得賞金2100万円とオープン馬の中では稼ぎの少ない馬が、毎年好メンバーが集結する、この高松宮記念の前哨戦で無事に出走枠に入ることができたのだから…。例年なら、まず除外。確実にツキはある。
16日にミッキーラブソングの主戦でもある小牧太主催で、橋口弘調教師の引退慰労会が行われた。その席で小牧太ジョッキーがこんなことを言っていたのだとか。
「最近、競馬で泣いていないから、泣きたいって話になって。“阪急杯で泣く準備はできています”って小牧さんは言ってました。それを聞いた酒井(ミッキーラブソング担当の持ち乗り助手)はすでにもう泣いていましたよ(笑い)」(橋口慎調教師)
実にJRA重賞96勝を挙げる名門・橋口弘厩舎の中で、重賞をまだ勝ったことがないスタッフは酒井助手だけなのだとか。厩舎最後の重賞出走で、従業員全員が重賞Vを決めるフィナーレが実現すれば…まさに競馬の神様にしかなしえない最高の演出だろう。
もちろん、準備にも抜かりはない。1週前追い切りで坂路4ハロン51.6-12.7秒の好時計を叩き出し、「めちゃくちゃ具合はいい」(橋口慎師)し、[2100]の好成績を残す阪神芝内回り1400メートルが舞台というのも言うことなし。お膳立ては整った。
どんな時でも、丁寧かつウイットに富んだ返しで我々報道陣を和ませてくれた橋口弘調教師。松永幹夫が「競馬の神様に愛された男」なら、橋口弘次郎は“競馬マスコミに誰よりも愛された男”だろう。その最後の重賞、今回ばかりは私情たっぷりに、応援させてもらう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)