牝馬クラシック路線に新風 ヴィブロス勝負駆け/トレセン発秘話
◆1週前追い切りにまたがった内田博は上がってくるなり「すごいね」
「強い馬が必ず勝つとは限らない」のが競馬。ことクラシックのトライアルともなれば、その度合いはより強くなる。
すでに賞金が足りている有力馬はメイチに仕上げてくることはまずないし、本番に向けて試験的なレースを試みてくることもあるからだ。そこに勝負駆けを仕掛ける賞金不足の馬が台頭する隙が生まれる。
さすがに、リオンディーズ、エアスピネル、マカヒキの「BIG3」が出てくるGII弥生賞でそういうケースは望みにくいにしても、GIIIチューリップ賞(5日=阪神芝外1600メートル)なら、その狙いもありだろう。
毎年、桜花賞の王道トライアルとして、有力馬が出走してくるチューリップ賞だが、過去10年で本番への優先出走権が与えられる1〜3着に、収得賞金900万円までの、いわゆる「勝負駆け馬」が食い込まなかったケースはただの一度もない事実は見逃せない。ただし、実績馬の間に割って入るには、それなりのポテンシャルが必要なのも言うまでもあるまい。
賞金はないが、持っている能力は一級品。今年でいえば、まさにヴィブロスが“最適合馬”だろう。1週前追い切り(ウッド6ハロン81.2-11.9秒)にまたがった内田博は上がってくるなり、「いや〜、風みたいだった。すごいね」と感嘆の声を漏らした。それだけの体感スピードがあったということだ。
しかも「フットワークの柔らかさはヴィルシーナより上かも」。2012年の牝馬3冠で、あのジェンティルドンナのオール2着に食い下がった全姉と比較したこの発言も聞き逃せない。
姉も担当した安田助手もチョッピリ自信ありげにこう言う。
「体も少し増えてますし本当に状態はいいですよ。相手は揃いますけど十分やれそうです。通用するかよりも、出られるかどうか。そっちの方が心配なくらいで」
幸い、登録馬全てが投票したとしても「11分の9」の抽選確率で出走できるというのだから、分は悪くない。今年のチューリップ賞、実績下位で激走するなら、間違いなくこのヴィブロスだろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)