2歳女王への挑戦権をかけた戦い 決め手のジュエラーか/吉田竜作マル秘週報
シンザン記念2着からここへ臨むジュエラーの藤岡調教師は何やら自信ありげ
いよいよ今週から桜花賞、皐月賞のトライアルが開幕する。チューリップ賞、弥生賞はいずれも本番と同じ舞台で行われることもあって“直結度”が高いとされるレース。先週の段階から各社の記者が1週前追い切りの取材に飛び回っていた。
記者は弥生賞に出走するエアスピネルの追い切り(坂路4ハロン50.8-12.0秒)を見届けてから武豊のもとへ。「前走(朝日杯FS2着)後、初めてまたがったけど、走らせると相変わらずいいね。レースが楽しみ。勝ってGIに向かいたい」と歯切れのいいコメントが返ってきた。
ただ、続けて出てきた言葉に今年の牡馬クラシック戦線の複雑な関係性を見た気もした。「今年はいいメンバーだものね。で、マカヒキには誰が乗るの?」と武豊。報道陣から「あくまで弥生賞まではルメールです」の声。記者も友道調教師からそう聞いていたし、現時点ではそうとしか答えようがない。
しかし、ルメールにはサトノダイヤモンドという文字通り“ダイヤモンド級”のお手馬がおり、マカヒキのデビュー戦にまたがったミルコ・デムーロには2歳王者リオンディーズがいる。「あくまでこちらは選んでもらう立場なので。弥生賞が終わらないことには何とも言えない」と友道調教師も複雑な胸の内を明かした。
例年なら誰もが鞍上に立候補したいほどの器だろうが、まだパートナーは流動的というのが今年の牡馬クラシック戦線の特徴。裏を返せば、素質馬が皆無事にここまで来たということなのだろうが…。
一方、“プレ桜花賞”という見方をされることが多かったチューリップ賞も今年は様相が異なる。クイーンCで最高のスタートを切った2歳女王メジャーエンブレムが本番に直行することで、今年は“挑戦権”をかけた戦いといった色合いが濃くなっているのだ。
「強いのは確かに強い。ただ、ああいった(逃げる形ばかりの)レースをしているうちは、いずれ厳しくなると思う」と口にするのは、シンザン記念2着からここへ臨むジュエラーの藤岡調教師。本番では敵の圧倒的なスピードに、決め手で対抗できるということか、何やら自信ありげだ。
阪神JFではメジャーエンブレムの3着に敗れたブランボヌールは1週前の坂路で4ハロン52.2-12.4秒の猛デモンストレーションを披露。「パワフルでいい走りだった。体は増えているかもしれないが、休ませたことでたくましくなったもの。成長を感じる」と中竹調教師は目を細める。
2歳女王については「スピードが違うのかな? 普通に走っていてあれだもんね。他の馬が追いつこうと思っても追いつけないんだから」と一目置くが、「阪神JFは前残りの展開。あの位置から差を詰めてきたのはウチのだけだった。マイルでもやれるのを証明してくれたのは大きい」とまだ白旗を掲げるつもりはない。
例年とは少し趣の異なる2つのトライアルレース。存分に楽しみつつ、本番での位置づけをどうするか、注意深く探っていきたい。
ちょっと早いが、最後に2歳世代の話題も少々。2月上旬に栗東には「ゼッケン1番」のミスキンカメ(牝=父ダンツシアトル、母スズカミニオン)が入厩したが、すぐに放牧に出された。なぜ、このようなことをしたのか? 受け入れた武田“元調教師”に聞いたところ…。
「九州産馬だし、誰でも預かってくれるわけじゃないだろ。自分もお世話になったオーナー。それならまずウチに入れて、引退前に引き受けてくれる厩舎を探そうとなったんだ」
いうなれば、名トレーナーの“最後のご奉公”だったのだろう。この後は日吉厩舎へと籍を移し、デビューを目指す。クラシック戦線たけなわだが、2歳馬たちも確実に動きだしている。