ジャッカルがここで勝ったとしてもM・デムーロ効果じゃない/トレセン発秘話
◆戦列に復帰する“5歳世代最強馬”トーホウジャッカル
「菊の3着、2着が有馬で1着、2着。やっぱりトーホウジャッカルが最強でした」
これ、谷厩舎を担当する某社の先輩トラックマンから来た今年の年賀状の文言。昨年暮れの有馬記念が終わった時にはまったく気付かなかったが、確かにそうだ。
1着ゴールドアクター、2着サウンズオブアースは、トーホウジャッカルがレコードで制した一昨年の菊花賞3、2着馬。暮れのグランプリでワンツーを決めた馬たちの上に、トーホウジャッカルがいたのだ。一時、レベルを疑問視されていた現5歳世代もなかなかどうして強いのである。
そんな“5歳世代最強馬”トーホウジャッカルがGII阪神大賞典(20日=阪神芝内3000メートル)で戦列に復帰する。
昨夏の札幌記念以来、7か月ぶりとあって正直、1週前追い切りの動きは物足りなかった。それでも、だ。爪を傷めて昨春の阪神大賞典を回避し、そこから1か月ほど馬房の中で運動もできない最悪の状況が続きながら、宝塚記念で0秒3差4着に“激走”したトーホウジャッカルの底力からすれば、「いきなり走っても驚けない」と思っているのは記者だけではなかろう。
あの宝塚記念でレース直後に見せた鞍上・酒井の悔しそうな表情は今でも忘れられない。
「(勝った)ラブリーデイについていくこともできたが、慎重になってしまった。僕がもっと馬を信じてあげていれば…。この馬はバケモンです」
“痛恨の宝塚”も踏まえ、馬を信じて勝ちにいく競馬に徹した札幌記念は0秒5差8着。レース後、酒井は横でパトロールビデオを見ていた勝ち馬ディサイファに騎乗した四位に「(酒井)学の乗り方は間違ってない。洋芝が合わなかっただけで、秋にはまた走ってくるよ」とアドバイスをもらったという。
一連の流れを見てきた担当記者としては今回、ミルコ・デムーロに乗り替わるのはどうなのかと思わずにはいられない。長期休養明けだった宝塚記念で慎重になるのは当然だし、札幌記念にしても何ら騎乗ミスはない。トーホウジャッカルと酒井は「名コンビ」のはず…。
これで結果が出ようものなら、またしても“デムーロ効果”とされてしまうのだろうか? レースを前にした段階でこれだけは言っておきたい。阪神大賞典でトーホウジャッカルがいきなり走ったとすれば…。それは鞍上うんぬんではなく、世代最強のポテンシャルだからこそ、なせるワザである。
(栗東の坂路野郎・高岡功)