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レッドアヴァンセ見限れないこんな裏話が…/吉田竜作マル秘週報

  • 2016年03月16日(水) 18時00分


音無調教師も「パドックで見ても細くは映らなかった。(競馬場の)はかりがおかしかったのかな」

 クラシック第1弾に向けてのトライアル戦線真っただ中ではあるが、牡馬、牝馬路線それぞれで一番ハイレベルな熱戦だったのは弥生賞、チューリップ賞の両トライアルとしても誰も異論はなかろう。特に弥生賞は歴代の“ベストレース”に挙げる人もいるのでは。

「スタートで少し遅れて後ろから。結果的に流れは向いたのかもしれないけど、ルメールも慌てずに乗ってくれた。レベルの高いレースになると、一つのミスが命取りになるけど、ゲートやポジション取りまでのロスを、何事もなかったようにはね返してしまうのがすごいよね」とは、無傷の3連勝を決めたマカヒキを管理する友道調教師。

 どこか第三者的な発言に聞こえるのは、まだこれほどの馬を自身が管理している実感がないからなのか?「今まで預かったことのないタイプ」と評したマカヒキは、もはや次元が違う馬なのかもしれない。

 坂路小屋でこの友道調教師の隣に鎮座する音無調教師も“マカヒキ派”の一人だ。

「切れ味が違うよね。中山は直線が短いから瞬発力がある馬に有利。そういう点でも皐月賞はこの馬かなという気もする」

 記者もマカヒキの父ディープインパクトさえも凌駕する迫力と伸びやかなフォームに魅入られた一人だが、だからといって「皐月賞はマカヒキで決まり」とまでは思っていない。2歳王者リオンディーズも“好発進”をしたからだ。

 リオンディーズと同じように、新馬→阪神JFと最少キャリアでGIを制したジョワドヴィーヴルを手がけていた松田博元調教師が当時、漏らした言葉を思い出さずにはいられない。

「早くにGIを勝ってしまうと、経験を積ませるのが難しくなるんだ。どこを使うにしても斤量を背負うから、トライアルくらいしか使えなくなる。俺は“トライアルなんか負けたっていい”って気持ちだったが、周りはそうもいかんだろう。負けてキャリアを積んでいった方が先々のためにはいいこともある」

 経験に勝るものはない。が、そう経験を積めない状況となれば、“質”が大事になってくる。その点、リオンディーズは久々のなか、勝ちにいってのクビ差2着。そのうえで本番前に最大のライバルの存在をハッキリ意識できる貴重な経験ができた。ひと叩きしたことで落ち着きを取り戻せば、朝日杯FS時のような豪脚復活も…。当然、逆転が視野に入ってくるわけだ。

 一方、マカヒキ同様に、シンハライトが無傷の3連勝を決めたチューリップ賞を、「最初に前が開いた時にスッと動けていれば楽だったんだろうけど、そこで辛抱してしまった。それから外に出したところでシンハライトと体を併せる形になってしまって…。あれであの馬の勝負根性を引き出してしまった」と振り返ったのは2着に敗れたジュエラーを管理する藤岡調教師。

 ただ、こちらも手応えありの敗戦だったようで「もともと本番を見据えて送り出したものだし、これで次はもっと良くなると思う。速い時計にも、阪神の坂にも対応できたうえで、負けたことで気楽に臨める。余計なプレッシャーを感じることもないからね」と不敵な笑みを浮かべる。

 その差はわずかにハナ。ルメールを手放すことになったマカヒキと違い、M・デムーロという最強の切り札は手の内にある。こちらもまだ勝負付けは済んでいない。

 いや、気になる馬がもう1頭。激戦チューリップ賞で、3番人気に推されながら8着と不可解な敗戦を喫したレッドアヴァンセだ。当日の馬体重はマイナス14キロ。これが影響したのか、「最後もまったく伸びなかった」と不可解な走りに武豊も首をかしげるしかなかったが、実は栗東に帰厩してから、もっと不可解な現象が起きた。

「帰ってきてすぐに量ったら、減る前よりもむしろ増えていたんだよな」とは東田助手。音無調教師も「パドックで見ても細くは映らなかった。(競馬場の)はかりがおかしかったのかな」と納得がいかない様子だ。

 元ジョッキーでもある前出の東田助手は「2桁も数字が増減すれば、そりゃあ騎手だって意識する。本番は次だし、ユタカも無理はさせなかったのかもね」。この不可思議な馬体減が本番に影響をもたらすものでないとすれば、レッドアヴァンセもまだ見限るわけにはいかない。

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