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「こういう子を天才っていうんやな」一番衝撃を受けた新人

  • 2016年04月05日(火) 18時00分
小牧太

今回は藤田菜七子騎手についての“太論”も


今回は、ユーザーからの興味深い質問を3つほどピックアップ。橋口先生との懐かしいエピソードや、これまでに一番衝撃を受けた新人についてなど、貴重な思い出を明かしてくれました。さらに、藤田菜七子騎手についての“太論”も!
(取材・文/不破由妃子)


康誠ほど衝撃を受けた新人はいないね

──今回もたくさん質問がきています。まずは、「橋口先生が小牧騎手にまつわる忘れられないエピソードとして、ペールギュントで朝日杯を負けた年(2004年)の忘年会の挨拶で、『どんなに怒られても僕はこの厩舎から離れません』と話したことを挙げていました。良かったらそのときの状況や心境を改めて教えてもらえませんか?」というリクエストです。

小牧 あ〜、そんなこと言うたかもしれんなぁ。ペールギュントの朝日杯は僕にとっても思い出深いね。乗り方(後方一気)について、新聞や雑誌でめっちゃ叩かれたから。乗り方については僕もずいぶんと悩んだんやけど、“勝つんやったらこれしかない!”と腹をくくって乗ったんやけどね。

──確か前走の東京スポーツ杯2歳Sで中団から行って、最後の直線で思ったほど脚を使えなかった(2着)ことから戦法を切り替えたんですよね?

小牧 そうそう。だから僕としては悔いは残ってないんやけど、すぐに乗せ替えられたからね。園田から移籍してきた最初の年やったし、「ああ、厳しい世界やねんなぁ」と思った覚えがあるわ。すごく印象に残っている。

──忘年会で「どんなに怒られても…」と挨拶をしたということは、レースの後にガツンと怒られたんですか?

小牧 いや、直接ガツンとっていうのはなかった。でも、なんせレースが終わったその場で「次はユタカ(武豊騎手)で」って電話したらしいから、相当怒ってたんやろうけど(苦笑)。

──今となっては懐かしいエピソードですね。続いては、「浜中騎手と仲が良さそうに見えますが、実際も仲がいいのですか?」という質問がきています。

小牧 基本的に仲の悪いジョッキーはいないけど、確かに浜中とは仲いいよ。飲みに誘ったりはしないけど、彼とは昔からよう話す。浜中は、人としてバランスがいい子やと思う。なんていうのかなぁ、わきまえているというのか、賢いんやね。たくさん勝てるようになっても決して調子に乗らんし、しっかりしてるよ。

──浜中さんに限らず、小牧さんは本当に若手から慕われていますよね。続いては、新人ジョッキーに関する質問です。「今年も新人ジョッキーがデビューしましたが、小牧騎手が今まで見てきたなかで、園田時代も含めて“これはすごい新人が出てきた!”と思ったジョッキーはいますか?」。

小牧 それはもう(岩田)康誠やね。彼がデビューしたとき、それこそ「すごい新人が出てきたな」と思ったよ。スタートがなんせ巧くて、どんな馬に乗っても飛び抜けて速かった。「こういう子を天才っていうんやな」と思ったもん。最初から天才的やったわ、アイツは。

──実際に見てこられた小牧さんの言葉は説得力がありますね。中央の新人はどうですか?

小牧 最近は、中央の若手もレベルの高い子が多いけど、康誠ほど衝撃を受けた新人はいないね。それ以前に、あんまり乗せてもらえんかったりとか、いろんな事情があるからねぇ。やっぱり、まずは数を乗るというか、実力と経験が噛み合わないと、伸びるもんも伸びんよね。今、菜七子ちゃんが注目を集めてるけど、彼女だっていい馬に乗せてもらえたらポンポンと行くんやろうけどね。やっぱり、勝つ馬に乗らんと勝てんて。

小牧太

彼女だっていい馬に乗せてもらえたらポンポンと行くんやろうけどね



──せめて、もう少し騎乗数が増えれば…と思いますね。

小牧 ホンマやで。早くJRAでも1勝せんと、本人が大変やと思う。どうしたってプレッシャーになるやん。そもそも盛り上がるのが早すぎるやろ。なんかねぇ、かわいそうになってくるわ。スポーツ新聞でも一面で取り上げられたりして、ちょっとやり過ぎちゃうかなと思う。本人はしんどいはずやで。これでもけっこう心配していて、ユタカくんとも「今日は勝ったかな」なんて、気にして見てるんやけどね。

──おっしゃる通りです。

小牧 園田には女性ジョッキーはおらんかったけど、競馬学校で一緒やった子で上手な子がおったなぁ。そうそう、船橋に行った稲川由紀子さんや。最初から本当に巧くて、これがまた気の強い子でねぇ。デビューしてからも乗れてたんちゃうかな。いまだに覚えてるわ。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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