JRA史上初の7歳牝馬によるGI制覇
年甲斐もなくとよく言うが、そもそも、トシというのは、いつからがその対象になるのか。いいトシをしてとか言って、トシがものごとを判断する材料になるかのような言い方は確かにある。だが、そうした規準にとらわれない先人はいくらでもいた。あやふやな規準なんてアテにせず、そこからはみ出した人生、そうあることを生き甲斐とする生涯を送っている人には、どこか輝いているものがある。
競馬では、よく世代間のレベルを比較することがあり、今年の牡馬では4歳馬が重賞で好成績を残してきた。迷うなら4歳馬をと、その選択もいいのだが、そればかりに囚われていてもうまくいかないし、そんな簡単なものではない。
ヴィクトリアマイルは、ストレイトガールが勝ったことで、とにかくリピーターが強いレースとして定着した。ヴィルシーナに続く2頭目の連覇に加え、JRA史上初の7歳牝馬によるGI制覇という記録まで生まれた。ものごとを判断する材料にトシは関係ないことを証明する貴重なケースといえる。リピーターという点でも、2頭の連覇の他に、ウオッカの2着、1着、ブエナビスタの1着、2着、ホエールキャプチャの1着、2着と続いており、一度連に絡めば次の年も狙えるという流れになっている。歴史の浅いヴィクトリアマイルにある傾向が、今後どうなっていくのか。そして、7歳牝馬のこれからがどうなるのか、興味深い。
ケタ違いの瞬発力を発揮したストレイトガールに戸崎圭太騎手は「頭の下がる思い、本当に見事な走り」と語り、藤原英調教師は「馬を信じながらやってきました」と述べ、最大目標を達成した喜びにひたっていたが、何よりも、昨年12月の香港スプリント9着後、引退する予定だったのを、現役続行を決意したオーナーの意向が実ったことに敬意を払わねばならない。
年甲斐もなくという物言いに対し、常にやる気のある年長者が悩まされている現実にひとすじの光明を示した7歳牝馬の勝利、そんな風に捉える向きもあろう。それと、一度転んでもそれに屈せず、ふるい立つ姿と捉えたものもいただろう。人生は長い、悲観もするが、七転び八起きというではないか。転んでも悟りをひらく生き方こそ目ざすものにしたい。とにかく、人間の先入観を覆すストレイトガールの勝利だった。