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ラニが切り開いた道をたどるか ビーチマリカ/吉田竜作マル秘週報

  • 2016年06月22日(水) 18時00分


◆加用調教師「この血統は牝馬に出た方が走るし、初めて追い切った時の動きも悪くなかったから」

 現在進行中の2016年は後々エポックメーキング的な出来事が数多く起こった年として記憶に刻まれるのではないか。

 例えば「1月生まれの日本ダービー馬誕生」はPOG的な視点では結構な出来事。もっと大きな流れで言えば、ラニの歩んだ軌跡はダート馬の新たな可能性を一気に広げた。日本馬初のUAEダービー優勝馬となっただけでなく、このレースがケンタッキーダービーへの登竜門(各ステップレースの着順に応じてポイントが付与され、上位馬が優先的に出走できる)となったことで、米国クラシックへの門戸が開かれ、そして実際に挑戦した意義は大きい。

 国内のビッグレースを取り尽くしたオーナー、牧場サイドにとっては、まだ誰も手をかけたことがないバラのレイは大きな魅力。ラニに続けとばかりに、来年のUAEダービーにエントリーする馬はさらに増えるのではなかろうか。

 あくまでPOG的な視点にこだわる当コラムは逆算的に考えてみた。UAEダービーにエントリーするにはそれなりの国内実績が必要。日程的なことを考えれば、交流重賞の兵庫ジュニアグランプリや全日本2歳優駿を勝つことがベストとなろう。ただし2歳ダート路線は芝に比べてバラエティーに乏しく、賞金を順調に加算していくのがとにかく難しい。ある意味、クラシック以上に“狭き門”と言えるかも。

 そこで何より重要になるのが「一刻も早く2勝目を挙げる=オープン入りを果たす」こと。となればメンバーが揃う秋よりも前に、できるだけ早くデビューし、勝ち上がり、そして2勝目をうかがう態勢を整えた方がいい。要はダート路線のエリート候補生の歩みが今後、劇的に変わる可能性を秘めている。

 その観点で注目したいのがビーチマリカ(牝・加用)。父スマートファルコンは今年デビューとなる新米パパで、交流重賞を“無双”した姿は記憶に新しい。そして母ビーチフラッグはダート、芝両方でのオープン勝ちに加え、交流重賞でも2度の2着。母としても9頭をターフ(というか、ほとんどダート)に送り込み、そのうち8頭がJRAで勝ち星を挙げる優秀さ。ビーチマリカはその10番子にあたる。

「お母さんは現役時はそれほど大きくもなかったし、ピッチ走法で走っていた馬だったんだけどね。母親になってからは父親のいいところをよく伝えてくれている。牝馬のビーチマリカもすでに480キロくらいある大きな馬。どちらかといえば父親の方に似ているかな。この血統は牝馬に出た方が走るし、初めて追い切った時の動きも悪くなかったから」と早くも手応えをつかんでいるのは母ビーチフラッグを管理し、その産駒も多く手がけてきた加用調教師。「こちらでは番組も少ないので一度放牧に出して札幌に連れて行くつもり。まずはダートから使うことになるかな。馬の格好や血統からも、その方が良さそうだからね」と早い時期のダートでの勝ち上がりを計算している。

 メンバーが揃わないうちに一気に高額番組を勝つことができれば、それだけで“世界”を意識できるようになる。牝馬のビーチマリカにケンタッキーダービー挑戦までをイメージするのは難しいにしても、UAEダービーで日本のダート馬のレベルの高さを証明するシーンは十分にイメージできる。

 まずは札幌の新馬戦を勝ち上がることが条件になるが、新種牡馬の父の名を高めるような走りができれば…。ラニがつくった“道筋”を追いかけ、さらに強固なものにする活躍ができるかもしれない。

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