スマートフォン版へ

帝王賞のお祭り感

  • 2016年07月01日(金) 18時00分


◆大盛況の『うまかった広場』

 帝王賞は過去最高の売上げを記録するなど盛り上がった。今年から中央枠が1頭増えて7頭となり、拮抗した好メンバーだったという見方もあるが、それ以上に昨年度来、単純に馬券が売れるようになっているということのほうが大きいように思う。

 というのは、南関東限定の重賞でもしばしば「売上げ記録更新」のリリースが出ているし、南関東以外の重賞でもそうしたリリースをよく見かける。

 地方競馬の馬券の売上げが上がっている理由としては、地方競馬IPAT(JRA-PATで地方競馬の馬券発売)の導入が大きいが、地方競馬IPATでの発売がないばんえい競馬でも、ここ1、2年ほどは前年比で10%以上の売上増が続いているので、競馬全体で馬券の売上げが上がっていることは間違いない。

 帝王賞当日は心配された雨がほとんど降らなかったこともあって、競馬場も盛況だった。ゴール付近の馬券発売機は常に列ができていたし、飲食店の多くも夕方以降の時間帯は相当並ばないと買えないような状況だった。

帝王賞当日の『うまかった広場』は大盛況


 競馬場の雰囲気として最近感じるのは、平成初期にあった、“大人の遊び場”としての役割が戻ってきているのではないかということ。具体的な例として説明すると、競馬に詳しい中間管理職っぽいサラリーマンが、男女問わず若者からそのちょっと上の世代までの競馬初心者・初級者を連れて来場しているようなグループをよく見かける。特に帝王賞当日には、行き帰りのモノレールでも、もちろん場内でも多く見かけた。

 地方競馬IPATが始まって、今年10月でまる4年。中央競馬にしか興味がなかったファンが、地方競馬IPATによって平日も馬券を買うようになり、平日の夜にも競馬をやってるなら中央との交流レースくらいは見に行こう、ということで友人や同僚を誘って競馬場に来る、そんな循環ができていると思うのだがどうだろう。あくまでも競馬場の雰囲気からの想像だが。

 ちなみに帝王賞当日の大井競馬場の入場人員は22,636名。その人数で混雑するほどの盛況ということでは、20年ほど前と比べると隔世の感がある。

 バブルの余韻があった平成3、4年(1991、92年)あたりの大井競馬場の開催成績を見ると、6〜8月頃のトゥインクル開催では、5日間開催でコンスタントに20万人前後、6日間開催ともなると30万人近い入場人員を記録することもあった。つまり当時は平均して1日4万人前後の入場があったのだ。

 記憶として覚えているのは、当時のトゥインクル開催の重賞では、入場5万人は当たり前だったこと。今は競馬場の施設のつくりが相当に変わっているために2万人でもたくさん入ったと感じるわけだ。

 帝王賞当日とは対照的に、その前日の大井競馬場はかなり閑散としていた。雨が降ったり止んだりという天気もあったが、重賞の優駿スプリントが行われる日にもかかわらずだ。

 今は地方競馬でも、馬券の売上げ全体に占めるネット・電話投票の割合が50%を超えるようになった。それゆえどこの競馬場でも普段の開催は閑散としているところが多い。

 今後の課題としては、お客さんが競馬場にたくさん入る日と、そうでない日のギャップをどう埋めるか。売上げが上がっているからいい、ではなく、売上げ好調な今のうちから、その後のことについても考えておく必要があるだろう。

 先に、帝王賞の前日は競馬場が閑散としていたと書いたが、飲食店の多くは店員さんが暇そうにしていた。しかし帝王賞当日は一転、店員を増やしてもお客さんを捌き切れないという状況となった。

 競馬場内の飲食店にはおそらく契約があるのだろう。臨時売店などを除いて、お客さんが入る日/入らない日にかかわらず店舗は開けておかなければならない。お客さんが入らない日に競馬場に行って、暇にしている飲食店などを見ると「だいじょうぶだろうか」と思うようなこともしばしば。おもわず「開けていてくれて、ありがとうございます」と言いたくなってしまうほど。

 ネット投票が売上げの大半を占めるようになった今、来場者が減ることは仕方ないが、競馬場に足を運ぶファンが減り続けていいということはない。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング