▲亀谷敬正×南関公認予想士の対談企画 第2回は「夢追人」推薦の若手のホープが登場!
血統ビーム研究所・所長の亀谷敬正氏が、南関予想士をゲストに迎えてお送りする対談企画の第2回。今回のゲストは「狙い撃ち」の屋号で活躍する小林隆之さん。前回のゲストで、組合の理事長も務める「夢追人」が推薦する"若手のホープ"で、亀谷氏とは同世代。互いの競馬予想論から、予想家・予想士としての在り方、そして魅せ方まで……一体どんな話が聞けたのか!? (取材協力:TCK、南関東公認競馬予想士協同組合ホースレースリサーチ東京)
同世代で同じ穴党…でも違う?
亀谷 南関予想士さんとの対談企画、第2回目のゲストは「狙い撃ち」さんです。前回の理事長(夢追人)からの推薦で、"若手のホープ"と伺っていますので、どうぞよろしくお願いします。
狙い撃ち 若手と言ってももう45歳ですが(笑)。こちらこそよろしくお願いします。
亀谷 僕も今年40歳のおっさんなのに若手です(笑)。では世代としては一緒ですかね。
狙い撃ち 見てきた競馬は一緒でしょうね。あとこの世代で共通の話題といえば、大橋巨泉さんですか(笑)。
亀谷 40代、50代の競馬ファンは、巨泉さんですよね。今のネット時代だったらどんな反響だったかはわかりませんが(笑)。あんなに影響のある方は今の時代にはいませんからね。
狙い撃ち でも予想業界の中だと、私はまだまだ"鼻たれ小僧"という感じですね。1999年に脱サラしてこの業界に入って、2006年に「狙い撃ち」を開業しまして。普通なら独立まで10年ほど掛かるんですが、予想士や助手自体の数が減ったこともあって、早めに独立できたんです。なので、大井で一番新しいのは私のブースですね。
▲「狙い撃ち」の屋号で活躍する小林隆之さん 大井の公認予想士の中では一番の若手
亀谷 そうなんですね。ちなみに師匠はどういった方なんですか?
狙い撃ち 昔に「穴馬報知社」という予想ブースがありましてね……
亀谷 おっ! "穴馬"というぐらいですから、穴党なんですか?
狙い撃ち 「100円玉を茶色いお札に変える」という、"浮き世の世界では体験できないこと"のお手伝いができればと(笑)。
亀谷 なるほど(笑)。予想するうえでのファクターは何を重視されているんでしょう? もちろん、レースによって変わるとは思うんですけど、例えば僕の場合、「血統で予想する人ですよ」という売り文句があったりするんですけど。
狙い撃ち 一番の根底は"格重視"ですね。
亀谷 "格" ……ですか?
狙い撃ち 基本的に近走で着順がいい馬というのは、皆さん買いやすいわけですよね。それに加え、専門紙さんの馬柱に書いてあるのはせいぜい遡って5走、6走というところ。ですけど、その馬の格を知るには、デビューからその馬を知っていなければならない。毎日現場でレースを見ている、私たちだからこそ知る"能力"ですよね。潜在能力、実績……そこを加味して導き出された“格”のある馬から狙う、というところがやっぱり穴馬券につながっていくと思うんです。
亀谷 恐縮ですが、理解を深めたいので、僕の勝手な競馬観で質問させていただいてもいいですか?
例えば馬場でいうと、僕の競馬観では「軽い馬場」と「重い馬場」で、その"格"が変わると考えます。中央だと砂の乾き方だけでも違くて、馬場がドロドロのときは前残りで、だんだん乾いてくると差しとかもあったりするので。その辺りの状況によって変わってくる部分は考慮されないんですか?
狙い撃ち 私が言う"格"は、その馬の強さ、「絶対値」と言った方がいいかもしれませんね。例えば、ゴルフでも300ヤードを飛ばす人がいる。でも最近は駄目でどんなに頑張っても240ヤードしか飛ばせない。それで人気を落としているけど、でももともとこいつは300ヤード飛ばせるんだ、という馬を積極的に狙って予想を組み立てていますね。
亀谷 なるほど。僕は日本のプロゴルファーでも、日本のゴルフ場なら海外のメジャー優勝選手に勝てる場合もある、という考え方なんですよ。同じ穴党でも予想に対するアプローチは違うもしれませんね。
狙い撃ち ただそうは言っても、地方はクラスが細かく分かれていて、目に見える極端な力差はありません。だから自分の見た"絶対値"に対して、臨機応変に必要なファクターを重ねていく……といったところが、実際のところですかね。
ファンには難解? な地方のクラス分け
亀谷 そうそう、いまちょうど話に出ましたけど、地方のクラス分け。わかりづらいですよね(苦笑)。
狙い撃ち 難しいですよね。こっちの競馬の場合はクラス組み合わせというのはとても細かく分かれていて……(※南関東4競馬場のクラス分けは「A1・A2」「B1〜B3」「C1〜C3」まで8クラスに分類される)
亀谷 中央は基本的に勝ち上がりですから、クラスがわかりやすいんですけどね。
狙い撃ち こっちの競馬というのは今日は上クラスに入れられて不利だったけど、次の開催時には一枚下条件のクラスに入れられていたりするんです。例えば3歳の競馬で、本開催150万でクラスを区切っている。でも、次の開催は200万で区切ったから、「ああ、今回は不利になったな」とか。5着までの賞金で、とても細かく分かれているので、開催ごとに有利・不利が出てきます。これを一朝一夕に理解するのは難しいと思うので、そこは我々の出番と言いますか。
亀谷 そうそう、前回の対談終わりで夢追人さんの予想に"まる乗り"して儲けたんですけど、実はあの一着になった馬、50戦未勝利だったんですよ! これはすごいと。あれもクラスの前後が左右したと思うんですけど。やっぱり感動しましたね。あれは素人にはできない芸当というか。
▲前回の「亀谷流・編集後記」にて "まる乗り馬券"的中後、夢追人にご祝儀を渡す亀谷氏
狙い撃ち そう、まさに腕の見せどころですかね。
亀谷 このクラス分けだと先ほどの話に出た、格も非常に見えづらいですもんね。僕が予想士さんの立場だったら、その格を"カラーリング"して、一目でわかるようにしたい。それをWebサイトで展開したりね。
狙い撃ち なるほど、なるほど。そういった予想ブースをもっと利用してもらうためのアイディア出しみたいなのは、私たち若手グループでもやっているんで、参考になりますね。
大井で馬券を買う時はココを狙え!
亀谷 あと大井で馬券を買う際の"ポイント"みたいなものがあればお伺いしたいです。例えば、僕の中央の話で言うと、この時期は皆さん降級馬にグリグリと二重丸を打つと思うんですけど、あえて同クラスや勝ち上がったばかりの3歳馬を狙う、というのは有効なんです。もしこういったのがあれば。
狙い撃ち それで言うと、今年はこっちも3歳馬のB3格付は人気以上の結果が出る傾向にありますね。
亀谷 3歳馬がいいんですね。
狙い撃ち そう、「B3は3歳を狙え」。今の時期は斤量も2kg有利なので。
亀谷 やっぱり斤量はありますよね。クラス編成上、有利な斤量というか。
狙い撃ち そうですね。さっき言った通り、私の格付けはその馬の"絶対値"が基本になりますが、「斤量」と「対戦比較」も重要です。このときは同斤量でこっちが勝っていたけど、今日はこっちが斤量有利だから逆転できるんじゃないか、とか。斤量は気にしないという方もいるかもしれないですけど、私は気にしますね。
亀谷 なるほど。
狙い撃ち あと大井に限った話ではないですが、"好き嫌い"は予想に反映させないようにしていますね。これ、ファンの方で意外とできない方が多いと思うんです。馬、馬具、もちろん騎手も。個人的な思い入れを予想に反映したところで良いことはないかな。
亀谷 僕もそれは一緒ですね。結果を見て「何やってんだ!」と思うことはないとは言えませんが(笑)。馬はもちろん、ジョッキー、生産者や調教師といった「人」に対しても個人的な感情は一切抜いて「血統」を起点とした「馬」とフラットに向き合って予想してるつもりです。
あと夢追人さんにも聞いた話ですが、例えば当日に雨で馬場が想定以上にドボドボになったりしてしまった場合は、前もって用意しておいた「全レース分の予想」(1,000円)は都度変えるんですか? 夢追人さんは"予想は変えない"というポリシーがあると仰ってましたが。
狙い撃ち これは予想士それぞれで分かれるところですが、私は変えますね。
亀谷 なるほど、変える派ですね。
狙い撃ち 現場にいてほんとに直前の、生の情報を提供できるというのが我々の売りだと思っています。もちろん予想を変えて失敗することもありますが(笑)。正解のない話という前提で、私の場合は「変えない」と意地を張るよりも、やっぱり当てるのは当てないとという考え。あともちろん生き物ですから、パドックの状態もありますしね。
▲予想士は開催中にパドック、コース、予想ブースを何度も行き来し、その日の傾向把握に努める
亀谷 では、狙い撃ちさんで最初に全レース分の予想を買われた方は、一応毎回ブースに行って予想を確認しに行った方がいいですね。
狙い撃ち 面倒掛けますが、馬券を当てて喜んでもらうためなので、よろしくお願いします(笑)。あと、中央の場合はブリンカー申告制だから、付けると言ったら付けないといけないですね。こっちは付けると言って付けてこない、なんて場合もありますから。その辺りも地方ビギナーの方は要注意です。
亀谷 なるほど、地方独特のルールにも気を配りたいですね。
予想士・予想家のイメージを払しょくするには
狙い撃ち 亀谷さんのファンってやはり若い方が多いんですか? 先ほども少し話しましたが、もっと予想ブースを利用してもらうために、参考になることがあればと思って。
亀谷 実は、ご年配の方から応援して頂けるんですよ。特に50より上のオジ様方に(笑)。しかも「言ってることはよくわからんが、なんかお前が出す気迫とか雰囲気が好きだ!」みたいなことをいつも言われてて。自分では理論派だと思っていたのですけど(笑)。
狙い撃ち なるほど、なるほど。
亀谷 でもその意見を聞いて、「確かにそうかも!」って思う部分があって。その「自分の理論を強く信じる気持ち、気迫」によし乗った! みたいな。すみません、本当に素人意見で申し訳ないんですが……僕もそういった大井の予想士さんから滲み出る"気迫"を買いたいかなと。私たちは酔っぱらって、そのまんままる乗りするだけなんで、理屈とかわかんないんです(笑)。
狙い撃ち そう、でもそれも大井の魅力のひとつですよね。その分、私たちは責任重大なんですが(笑)。でも実際に競馬が好きな方でも、予想家・予想士ってまだ怖い存在だな〜と思っている方が多いのかな、と思ったりするんですよ。
亀谷 予想士のブースって、"お祭りの屋台"に近いのかな? と。まぁ、お祭りの焼きそば屋さんも怖い人はいますけど(笑)。ライバルのディズニーランドでいえば、ポップコーン屋さんとかですよね。あそこは怖い人はいない(笑)。それはさておき、大井の公認ブースの予想士の皆さんは、焼きそば屋でいえば"お客様によりおいしい焼きそばを提供できるか"という勝負で向き合ってらっしゃると思うんですよ。
狙い撃ち もちろん、そうですね。
亀谷 でも中央競馬の場合、「いかに原価率をおさえて売ろうか」みたいな屋台もあるんです(苦笑)。もっとひどいのだと、後から法外なサービス料を請求するとか。ディズニーランドのポップコーンで例えると、「ポップコーンは無料だけど、入れ物代は30万円です!」みたいな、ボッタクリ(笑)。そういう一部の屋台のせいで、屋台全体のイメージが下がるのが哀しい。
編集部 最近も競馬予想で計30億円をだまし取ったというニュースもありましたしね。
狙い撃ち 私の場合はそういうイメージを持たれていることを考えて、ノリとか勢いで「さあ、寄ってらっしゃい」と言うよりは、まずは来て頂いた方にじっくり予想を聞いてもらうスタイルを取ってますね。
亀谷 そう。おいしい焼きそばを作っていても、まず食べてもらわなければ始まりませんよね。だから、呼び込みは絶対に必要です。その呼び込みをどうするか? 大きなお世話でしょうけど、予想士さんそれぞれのカラー・個性を持たせると面白いな、と勝手に考えてるんです。例えば、ユニフォームや予想ブースもそれぞれ色分けしたりしてね。
狙い撃ち いま着ているのもユニフォームなんですが、色も大分爽やかなイメージになりましたよね。少し前は黒ずくめで、濃紺のハンチング被っていて、いかにもという感じでしたし。
亀谷 実は、僕、子供の頃からイメージしてたことがあるんです。小さい頃に後楽園で見た予想家のイメージは、まさにその赤ペンにハンチング。まぁその方たちは非公認の方々だったみたいですけど(笑)。それをずっと見てきて、自分が予想家になるなら、「まずは従来の見た目とは変えよう」と。時代的にもデジタルの走りで、コンピューターをミックスさせた予想スタイルにしたいということと、他との差別化を狙って、まずは"今までにいない見た目"にしようと思いました。結局、僕の見た目はツナギ着てるオッサンですが(笑)。見た目って、カラーリングとか血統ビームとかの提供するツールの方は従来にないものです。
狙い撃ち なるほど、なるほど。
亀谷 あとシステムの話だと、「当たったらご祝儀」という文化はとっても粋で素敵だと思うんですけど、一見さんはちょっと渡しづらいかもしれませんね。ご祝儀を挟む熊手とか置いたらわかりやすいんじゃないですかね(笑)。大きい熊手は商売繁盛の目印じゃないですか?
編集部 えっ、そうなんですか! 知らなかった……
亀谷 僕も、行きつけの寿司屋の親父に聞いた話なんですけどね(笑)。熊手が大きいブースは好調とわかりやすくて良くないですか?
狙い撃ち ホームページには、予想ブースの利用方法を紹介していたりするんですけどね……確かに現場にいると何とも。
亀谷 事情も知らずに勝手に盛り上がってすみません。行きつけのすし屋の大将とかにも「大井競馬には中央にはない予想士さんのブースが面白いんですよ!」とかいう話をしたばっかりなので、つい(笑)。
狙い撃ち いえいえ、本当に参考になります。やはり私たちは平日に毎日競馬場で仕事して、会議するとしても週末の限られた時間になってしまうんで、どうしても籠った発想になってしまうんですよね。
亀谷 やっぱり、ディズニーランドとか成功しているアミューズメントパークは、ポップコーン屋のような屋台も含めて「新規の呼び込み」と「呼び込んだ新規をリピーターにする工夫」が凄いじゃないですか。
狙い撃ち いやいや、大変参考になりました。楽しかったです。何か昔の話とかをしていると、自分が助手になった頃の気持ちとかをふと思い出しちゃいましたよ。
亀谷 私もです。この対談終わりで狙い撃ちさんのブースに行って、しっかり"まる乗り"させてもらいますんで!
狙い撃ち 亀谷さん、こういうときは当たらないんですよ(笑)。
▲「狙い撃ち」こと、小林隆之さん ありがとうございました!
※最終回は年末の東京大賞典(GI)週にお届けします。
南関東公認競馬予想士・メンバー紹介▲現在の南関東公認競馬予想士は総勢13名(写真は12名)。計3回に分けて全メンバーをご紹介します!
▼狙い撃ち(上段右から3番目)
今回の対談にも登場した若手のホープ。馬券スタイルは馬複・馬単は軸1頭からの流し、3連複・3連単は2頭軸フォーメーションが基本。過去の最高配当は平成23年2月2日大井競馬9レースの3連単で、1,254,150円!! 南関東全競馬場で営業。
▼田倉の予想(上段左から2番目)
黄色の出馬表とハンチングがトレードマーク。予想士としてテレビにも多数出演しており、鋭い感性と豊かな情報、そして軽快なトークで場を盛り上げている。基本の買い目は軸にこだわらず縦目を切ることもある。大井・川崎・浦和の3場で営業。
▼グットニュース(下段右)
先代グットニュース譲りの穴予想が醍醐味。新馬戦に向けて、能力試験のチェックは欠かさず現場で行う努力家でもある。大井・川崎の2場で営業。
▼半ちゃん倶楽部 (上段左から3番目)
競馬予想士歴は約30年。多くのファクターの認識比較を極め、1日トータルして黒字になることを目標にしている。大井・川崎の2場で営業。