◆スプリント以上の条件でも好走を見せてくれるはず 今年、最初の2歳重賞となったGIII函館2歳ステークスを制したのは外国産馬のレヴァンテライオン(牡2・矢作)。メイクデビューでは函館競馬場の短い直線で、前にいた馬たちを一気に抜き去る豪快さを見せていたが、この函館2歳ステークスでは先行抜け出しという非常に優等生なレースぶり。しかもレースレコードとスピードの違いも証明してみせた。
育成を手がけたのは、浦河・シュウジデイファーム。実はメイクデビューの前は15日前に函館競馬場へ入厩。その後、再び牧場で調整され、この函館2歳ステークスは10日前の入厩となる。
デビュー前は仕上がりの良さも手伝って、様々なPOG媒体で取り上げられており、自分も優駿の「2歳馬情報」の取材で完成度の高い馬体を見たときに、早い時期からの活躍を期待していた。
「全てにおいて優等生と言える馬でした。これでスプリント戦を2勝となりましたが、それも完成度が高いからであり、気性の落ち着きや折り合いの付く走りからしても、距離の融通は利きそうです」
とシュウジデイファームの石川秀守代表。レース後のレヴァンテライオンは再びシュウジデイファームで調整されており、帰厩後はその石川代表の言葉を証明するかのように、スプリント以上の条件でも好走を見せてくれるはずだ。
このGIII函館2歳ステークスで2着となったのが、モンドキャンノ(牡2・安田隆)。ノーザンファームの生産馬で、育成先はノーザンファーム早来牧場の山内厩舎となる。
モンドキャンノもまた、メイクデビューの後はノーザンファーム早来牧場での調整を挟んだ馬。半馬身差での2着となったが、上がり3ハロンのタイムはレヴァンテライオンの35.5よりも速い35.4を記録しており、小回りの競馬場ならではの位置取りの差が現れた、勝ちに等しい負けと言える。
山内大輔厩舎長にとってはこのモンドキャンノの世代が、乗り慣らしから全てを手がけた初めての育成馬。管理馬では初めての中央重賞制覇との期待も大きかっただけにさぞ悔しかったと思うが、それでも早い時期のメイクデビューから勝ち馬を送り出し、重賞でも1番人気に支持される馬を送り出したことは、育成スタッフの力によるところが大きく、むしろ胸を張れる結果と言えよう。
ちなみにノーザンファーム生産馬たちは、7月終了の時点で、昨年を遙かに上回るペースで2歳戦での勝ち馬を量産中。山内厩舎で育成されていたアルアイン(牡2・池江)も、札幌競馬場へ入厩したとの知らせが届いている。今後は早期デビューで短距離戦を沸かすモンドキャンノのような馬と、中距離のデビューから来年のクラシック戦線での活躍を睨んでいくアルアインのような馬とで、更に2歳戦での勝利数を増やして行くに違いない。
現在のファーストシーズンサイアーの総合ランキングで、興味深いデータが出ている。
7月31日の時点で首位となっているのは、芝、ダート、そして距離を問わず産駒が活躍を続けるアイルハヴアナザーなのだが、なんと2位となっているのはリーチザクラウン。地方を合わせた勝利回数の8勝、そして産駒の勝ち上がり頭数の7頭共に、今年、初年度産駒を送り出した2歳馬ではトップの数字となっている。
中央競馬だけでもメイクデビューと未勝利戦を含めて5頭が勝ち上がり。初年度産駒の血統登録数が34頭しかいない事実を考えれば、驚異的な数字と言える。
この世代、リーチザクラウン産駒を多く育成した、日高・西山牧場育成センターの山田研児場長に話を聞く機会があったが、産駒の長所として特に強調していたのが、「身体の丈夫さ」。しかも父譲りの前向きさとスピード能力が遺伝されたことで、早期のデビュー、そして短距離戦での勝ち上がりにも繋がっているのではとも話してくれた。
既に勝ち上がった産駒の中には、2歳重賞を目標にしている馬も多いとのことであり、ここで新種牡馬第一号の重賞勝ち名乗りを上げるようだと、今年のファーストシーズンサイアーチャンピオンのタイトルは、リーチザクラウンにかなり近づくと言えそうだ。
昨年も話題を集め、今年の札幌開催でも
『マスターズ・アイ(Master's Eye)』が、7月31日から始まっている。
『マスターズ・アイ』は、札幌競馬場を限定としたツイキャスシステムを使ったパドック解説放送(館内でもエリアによっては視聴が可能)であり、メイクデビューといった注目の2歳戦を、様々なホースマンが血統、馬体などからレースや出走馬たちのみどころを語っている。
実は今年、最初の『マスターズ・アイ』で司会進行を務めたのは、辻三蔵さんとの競馬ユニット「ドリームカムカム」でお馴染みの私、村本浩平(笑)。社台ファームの吉田哲哉氏、ビッグレッドファームの岡田紘和氏と共に、この日の5レースと6レースで行われたメイクデビュー札幌の新馬戦を二人の視点から語っていただいた。
ちなみに5レースのメイクデビュー札幌に出走していたのが、社台ファームの生産馬で、父フランケル、母スタセリタという、GI16勝ベイビー(表現が古い)のソウルスターリング(牝2・藤沢和)。最後の直線では牝馬とは思えないほどの力強い末脚で、先に抜け出したアドマイヤマンバイ(牡2・梅田)を交わして勝利。その瞬間、5レースの注目馬としてソウルスターリングを上げていた吉田氏だけでなく、我々関係者も放送ブースの中で歓声を上げていた。
ソウルスターリングのスケールの大きさや今後の活躍については、これからこのコラムを書かれる筆者の方に託すとして(笑)、6レースも吉田氏の注目馬であり、社台ファーム生産馬のビーチマリカ(牝2・加用)と、岡田氏が注目馬としてあげたバニーテール(牝2・中内田)の2頭で、見事にワンツーフィニッシュを果たしている。
この『マスターズ・アイ』で語られる内容は、生産、育成、そして競走馬市場と様々な観点で馬の成長を見てきた、ホースマンならではの2歳戦の見方であり、決して予想行為では無いことを付け加えさせていただきたい。それでも吉田氏、岡田氏の二人から語られた、メイクデビュー出走馬の話(ソウルスターリングの父フランケルについても、二人からは色々とお話を聞かせてもらいました!)は、非常に興味深く、司会進行の立場を忘れて色々と質問をぶつけてしまったのも事実。
この後、札幌開催にお越しの方は、是非とも「ツイキャス・ビュワー」のアプリをインストールして(その際には合い言葉も必要)、『マスターズ』であるホースマンたちの解説に耳を凝らしながら、一方でパドックを周回する2歳馬たちに注目してください! 僕もなるべく噛まないように司会進行を頑張ります(笑)。