▲短期免許で来日中の香港のトップジョッキーJ.モレイラ騎手と福永騎手の対談が実現
短期免許で来日中の香港のトップジョッキー、J.モレイラ騎手と福永祐一騎手の対談が実現! 札幌競馬場を主戦場に戦うふたりが、騎乗論から世界の競馬まで、時が経つのも忘れて語り合いました。来日直後から驚異の成績を挙げているモレイラ騎手、そのトップジョッキーたる所以に迫ります。
“彼の騎乗はマジックというほかない”
モレイラ 今日は呼んでいただいてありがとうございます。
福永 こちらこそ、時間を作ってくれてありがとう。こういう取材は今までにもけっこうあったでしょ?
モレイラ いえ、ジョッキーとの対談は初めてですし、それ以前に、ジョッキーがこういったメディアで連載を持っていることも知らなかったです。
福永 香港やシンガポールにも、こういうメディアはないの?
モレイラ ないんですよ。だから、何をどこまで聞かれるのか、僕の何がバレてしまうのか、とても心配です…(苦笑)。
福永 もちろん話せる範囲でいいんだよ。ファンやメディアはもちろん、ジョッキーたちもみんなジョーに興味がある。だから、今日の対談はみんなが喜んでくれると思うよ。同じジョッキーとしてジョーの騎乗論も知りたいし、ブラジルの競馬事情やこれまでの軌跡なども、競馬ファン代表になったつもりで聞いていきたいと思ってます。
モレイラ 僕なんかでいいんですか? 僕は至って普通の男で、たくさんミスもするし、本当に大したことないんですけど(笑)。
福永 ミスをしないジョッキーはいないよ。僕が初めてジョーの存在を知ったのは、数年前のお正月にシンガポールに遊びに行ったときでね。競馬を観に行ったら、そこで「シンガポールにはすごいジョッキーがいるんだよ。今はバカンス中でいないんだけどね」っていう話を聞いて。それで、その後に香港に乗りに行ったら、ジョーがものすごく活躍していて、聞けば少し前までシンガポールで乗っていたジョッキーだと。そこで「ああ、すごいジョッキーとは彼のことか」と合点がいって、初めてジョーの名前を聞いたんだよね。
モレイラ 2013年の10月から本格的に香港での騎乗を開始したので、そのあとですね。
福永 確か1日8勝を達成(2013年9月6日・クランジ競馬場)したあとで、すでに“マジックマン”と言われていたような。
モレイラ 確かに、シンガポールで1日8勝を挙げたときはすごく話題になって、いろんなところで“マジックマン”と言われましたが、最初に僕の騎乗に対して“マジック”という言葉が使われたのはもっと前で、人気のない馬で勝ったときに、シンガポールのアナウンサーが“彼の騎乗はマジックというほかない”というような言葉を使って。それから度々使われるようになったんですよね。1日8勝したときに、それが一気に広まった感じです。
福永 そうだったんだ。そもそもジョッキーになったきっかけは何だったの? ご家族が競馬関係者だったとか?
モレイラ いえ、家族に競馬関係者はいません。8歳くらいのときだったかな、近所の競馬場に連れて行ってもらったんですけど、馬の美しさ、レースの激しさなどを目の当たりにして、すぐにフォーリンラブ(笑)。すべてがとても素晴らしいと感じたんです。それで、16歳から厩舎で働き始めました。
▲「馬の美しさ、レースの激しさなどを目の当たりにして、すぐにフォーリンラブ(笑)」
福永 ブラジルというと、どうしてもサッカーのイメージが強いけど、競馬の存在はメジャーなの?
モレイラ 40年くらい前は、すごく人気があったそうなんです。ただ、残念ながら今はあまり…。とても盛んとは言えないですね。自分も含めてですが、ブラジルで成功した騎手は、すぐに別の国に行ってしまうのがパターン化してしまって。だから、逆に言えば、世界中の競馬場でブラジル出身の騎手が活躍してるんですが、そのぶん国内の競馬は元気がないですね。
福永 そうなんだ。やっぱり賞金の問題とかもあるよね。
モレイラ もちろんです。賞金はすごく低い。国外で活躍しているブラジル人騎手の99%は、国内で乗っていたときより稼いでいると思います。もちろん、賞金の問題だけではなく、騎手としてレベルアップすることも、海外に目を向ける理由のひとつなんですけどね。
福永 ブラジルでトップジョッキーとして不動の地位を築いて、その後はまずフランスに行ったんだよね?
モレイラ そうです。まずはフランスで3カ月乗って、いったんブラジルに帰り、その後、シンガポールに拠点を移しました。
福永 フランスにはどういったきっかけで行くことになったの?
モレイラ ブラジルでよく騎乗依頼をもらっていたオーナーが、フランスに馬を連れて行くことになって。それで、フランスでも乗ってくれないかという依頼をいただいたんです。
福永 フランスでずっと乗りたいとは思わなかった?
モレイラ それは考えたことがなかったです。フランスの競馬はレベルが高いし、そもそもタフな業界で、サポートがしっかりしていないとジョッキーとして成功するのは難しいというイメージがあったから。実際に行ってみてイメージ通りだったし、いい馬があまり回ってこないことにショックも受けた。言葉の壁も思った以上に高くて、あまり結果を残せませんでした。
(次回へつづく)
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