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音無厩舎は「エース級」も期待通りの走りを見せるか(山本武志)

  • 2016年08月30日(火) 18時00分


◆「先鋒隊」と思っていた馬たちが大活躍

 春先にPOG取材を一通り終え、取材ノートを見返した時、今年の要注目厩舎は音無厩舎だと感じていた。常にリーディング上位に顔を出す厩舎ではあるが、決して良血馬の宝庫というわけではない。ただ、今年はディープインパクト産駒6頭に桜花賞馬ジュエラーの全弟にあたるハリーレガシーなど、血統的なレベルが非常に高いラインアップ。実際に2歳世代について話している音無調教師の表情は非常に明るいことが多かった。

 その中で春先からトレーナーがよく口にする言葉があった。「ディープ産駒はすべて秋以降からデビューする予定。ジュエラーの下も秋以降です」。音無厩舎は例年、2歳は比較的、ゆっくりとした始動。期待馬と言われる存在は秋の阪神、京都開催を中心に始動することが多い。ということで、前述の言葉は高い期待の表れだと思っていた。

 しかし、だ。この前提を踏まえた上で、実は今、非常に戸惑っている。こちらの見立てによる「エース級」より前に夏デビューを果たし、勝手に「先鋒隊」と思っていた馬たちが非常に優秀なのだ。厩舎ゆかりの血統馬ダンビュライトは中京のデビュー戦で5馬身差の圧勝を演じ、翌週にはアメリカズカップも完勝。この2頭は調教段階から厩舎スタッフの評価も非常に高く、しっかりと実戦に結びついた形だ。さらに、現在は骨折で療養中だが、2戦目の未勝利で大外から一気に突き抜けたアカカもインパクトのある勝ちっぷり。7月上旬だったか。「今、入っている2歳馬たちはいい馬が多いですよ」と生野助手が笑顔を浮かべていたのが懐かしい。

 こうなると、逆に秋の「エース級」も期待値通りの走りを見せるのか、記者の心の中に不安が芽生えているのは否めない。個人的に特に注目しているヴィクトリーやリンカーンと同じ一族で、春先から特に期待の大きかったアドミラブルはすでにゲート試験に合格し、現在はデビューへ向けての調整中だが、これから速い時計を出していくにつれ、どう変わっていくのか。他にもディープ産駒で期待の大きいアロマドゥルセやコペルニクス、さらには前述したハリーレガシーなどの未入厩組などの動向も気になるところ。どの馬も大きなアクシデントなく、育成されているというが、早く入厩の知らせを聞きたいところではある。

 ただ、阪神2週目の芝1800メートルに松若Jで出走するスティッフェリオは夏の中京でデビュー勝ちした2頭と同じように評価が高い。母のシリアスアティチュードは英GIのチェヴァリーパークSを勝ち、半姉のサプルマインドは昨夏に鮮やかなデビューVを飾った。「乗り味がいいし、どっしりとしています。いい馬ですよ。楽しみです」と生野助手。夏の勢いを持続できるのかという面も含めて、注目の一戦となりそうだ。

 ちなみに同じ週に阪神で行われる野路菊Sにはアメリカズカップが、秋の東京開幕週に行われるサウジアラビアロイヤルCにはダンビュライトが出走予定。結果次第では当然、こちらが王道路線の馬たちを「食う」ことも十分に考えられる。

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