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2歳牝馬2強 同じ年に生まれた宿命/吉田竜作マル秘週報

  • 2016年10月26日(水) 18時00分


◆怪物と女傑の2世対決

「確率」は均等に振り分けられるものではなく、どうしても“偏り”が出てしまう。それはサラブレッドの「世代の強弱」にも言えることで、やたらと強い馬が同世代に集中したり、逆に1頭だけ突出したり…。この偏りが様々なドラマの源泉になっているわけだが、記者は2歳牝馬戦線に“2頭への偏り”の気配を感じている。

 まずは怪物フランケル産駒ミスエルテ(池江)が次週のGIIIファンタジーS(11月5日=京都芝外1400メートル)の走りでファンに衝撃を与えることになるだろう。初戦(9月24日=阪神芝外1600メートル)直後にも当コラムで触れた通り、周囲のリアクションは「怪物出現」を確信させるもの。同じレースに出走したトレーナーは「相手が悪かった」と口を揃え、多くの関係者から「やばいのが出てきた」との声が…。

 レース後、すぐに池江調教師が「ファンタジーSから阪神JFへ向かいます」と言い切ったのにも驚かされた。最近は「キュウ舎へ帰って、様子を見てから」次走を発表するケースがほとんど。オーナーサイドと協議し、マスコミ発表の前に伝えておくという順序をきっちり守っている。

 もちろん、池江調教師も普段はそうした行動を取るのだが、次走どころか、年内のローテまで明確に口にしたのは、戦前から「デビュー3走目に阪神JFを」という青写真を描いていたからにほかならない。つまり初戦の勝利は“既定事項”のようなものだったのだろう。

「牝馬戦線はこの馬で決まり」。記者も当時はそう考えていたのだが…。ミスエルテのデビューから3週間後の新馬戦(16日=京都芝外1800メートル)で新たな逸材が出現した。名牝ブエナビスタの初子コロナシオン(池添学)だ。

 スタートしてすぐは、ちょこまかとしたフットワークで流れに乗れないところもダブって見えたが、それ以上に、あの加速する際の迫力というか、期待感というか…。姿形や動きはまさに母ブエナビスタを思い出させるものだった。

 少し違っていたのはレース後の状態くらいか。「思っていたほど硬さも出てないですし、とりあえずキュウ舎に置いて様子を見ながら次走を考えていきたい」と池添学調教師。よく耳にする話と思われるかもしれないが、ブエナビスタが新馬戦(3着)→未勝利戦(1着)を使った後などは「硬いどころか、放牧に出した方がいいと思った」と当時の主治医が証言したほど。記者たちも馬房から遠ざけられたものだ。

「(ブエナビスタも担当していた山口)慶次(キュウ務員)も“お母さんよりはだいぶまし”と言っていた」(藤原助手)ように、母の受け継いでほしくない部分を、父キングカメハメハの頑強さでうまくカバーできているのかもしれない。

 コロナシオンはミスエルテとは同馬主(サンデーレーシング)。注目の次走をファンタジーSにする可能性は低そう。使い分けるとなると、牡馬にぶつけるなり、阪神JFまでの間隔がきつくなったりで、少々窮屈なところが出てくるかもしれない。それでも、どこかで賞金を加算し、ミスエルテと阪神JFで覇を競うことになるはず。それが名牝の娘に課された運命なのだから…。

 怪物と女傑の2世対決はどのような物語をつむいでいくのだろうか。願わくば同世代に生まれた不運を嘆くのではなく、切磋琢磨し、成長していく2頭の姿を見守りたいものだ。

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