今またオグリキャップを想い起こすときがやって来ました。あの平成2年の有馬記念、中山競馬場は17万8千人のファンで埋め尽くされました。早朝からの異様な雰囲気は、手綱を託された武豊騎手にも届いてました。
こんな凄い馬の最後のレースに騎乗できることに胸おどる思いで、精いっぱい馬の力を出し尽くしてやりたいと心に固く決めていたと語っています。
オグリキャップの数々の激走の中でも特に印象深かったのが、マイルCSとそこから連闘で戦ったジャパンCではないでしょうか。
その頃の鞍上は南井克巳騎手でした。武豊騎手は、スーパークリークやバンブーメモリーでこれに立ちはだかる立場にあり、秋の天皇賞ではオグリを抑えて勝利し、マイルCSでは絶対優位のゴール前、逆転を喫しています。南井騎手は、その勝利の瞬間、まだ半分しか借りを返していないと次のジャパンCでの健闘を誓っていました。走る馬だけでなく、戦う人間にも闘志が乗り移っていたところに、名勝負と呼ばれる要因が色濃く反映されていたと思います。
そのジャパンCは、ホーリックスの驚異的レコードに迫る同タイムの2着。人馬共に火の玉の大激走でした。
そしてオグリキャップのラスト・ラウンドが武豊騎手にバトンタッチされ、安田記念で復活させ、そしてスランプをはさんで再び手綱を取った有馬記念へとつながります。
それまでの対戦の中、オグリキャップを十分に観察していた彼は、コーナーを回るときの弱点を見抜いており、2回の騎乗を見事に勝利に導きました。あのユタカコールに続くオグリコール。多くの競馬ファンの思い出の中に強く刻まれたそのシーンを、直に体験した者にとり、それは、生涯の感動の一場面となりました。そして、もう一度あのシーンを体験してみたいとの強い願望として、現在も生き続けていることでしょう。