▲先月の秋華賞優勝の御祝に、netkeiba編集部から花束を
馬券には絡めなくても、オーナーや関係者は最後まで見ている
Q. 直線で追うのをやめているジョッキーをよく見かけます。馬券を買っているファンはもちろん、関係者もおそらく最後まで目一杯追ってほしいと思っているはずですが、なぜあからさまにやめるジョッキーがいるのか。ケガ以外に何か理由があるのですか?A. そういう意見は、実際、ジョッキーの耳にも届いているし、ほかのジョッキーがどう考えているかはわからないけれど、自分でいえば、最後まで追う動作をやめることはない。
いっぽうで、すでに8着圏外が濃厚で、明らかに追っても伸びないような状態の馬については、そこからさらに何発も鞭を入れたりなど、激しく鼓舞することもしない。「実際に激しく追ってみなければ、伸びるかどうかわからないのでは?」と思う人もいるかもしれないが、ジョッキーはみな経験上、それ以上伸びないことがわかっているし、それでもなお激しく馬を動かそうとする行為は、むやみに馬を疲弊させるだけで、決して馬のためにならないと自分は考えている。
ただ、最初に書いたように、それでも追う動作をやめることはないし、8着以内に入れる可能性が残っている場合は、たとえ手応えが悪かったとしても、何とかそこにとどまれるよう努めている。
ご存じの通り、上位争いをする最中にゴール前で腰を上げたり、明らかに追う動作をやめた場合は制裁の対象となる。ただ、ひとつ言いたいのは、たとえ制裁の対象となってしまったケースでも、ジョッキーが故意に馬券圏外に負けさせるとか、そういった不正な目的ですることは絶対にないということ。勝てそうな場面で手を抜いたところで、自分たちには何ひとつメリットはない。
オーナーは当然、結果的に何着であっても自分の馬の走りを注視しているし、馬券を買っているファンも、自分が勝った馬を終始目で追っているはず。そんな衆目のなかにあって、明らかに追う動作をやめることは、そのままジョッキーとしての信頼を失うことに直結する。
ジョッキーのなかには、“馬券に絡めなければあとは同じ”という考えの人もいるかもしれないが、オーナーや関係者はそうではない。実際、「最後までしっかり追ってくれ」というオーナーはいるし、最後まで追わないことを理由に、依頼が少なくなってしまったジョッキーもいる。
それでもなお、追うのをやめる行為が目につくジョッキーは、必然的に淘汰されていくはず。ただ、自分も含め、たとえ本意ではなくとも、ファンの目にそう映ってしまう行為があったとしたら、それは皆で意識して改めなければいけないと思っている。
Q. 福永さんは、手袋をしているときとしていないときがありますが、その違いはなんなのでしょうか?▲ヴィブロスで制した秋華賞の時も白い手袋をはめていた
A. 簡単にいうと、掛かる心配のない馬は素手で、掛かる可能性のある馬は手袋をつけて乗っている。手袋をしていたほうがグリップが利いて、いざ掛かったときに抑えやすいから。だから、自分が手袋をしているときは、「引っ掛かる可能性を感じているんだな」と思ってもらってかまわない。
レースではそうやって使い分けているが、返し馬には、ほぼ全頭手袋をつけて臨む。なぜなら、返し馬では必ず馬を止めなければならないし、レースに向けて疲労を残さないためにも抑え込んで乗らなければならない。それを1日に何レースも繰り返していると、さすがに手が痛くなり、もたなくなる。
返し馬では、勝負服に合わせて指ありの白や黒の手袋をつけ、ゲートに入る前に外す。最初から掛かるとわかっている馬の場合は、返し馬の段階から指なしの白い手袋をつけ、そのままレースに臨むのが自分のパターンだ。
ちなみに、レースでは必ず指なしの白い手袋を使用しているが、なぜ“白”なのかというと、自分は掌が小さいから。追う動作や鞭を持ち替える際、自分の手が大きく見えたほうが追いやすく、鞭も持ち替えやすいため、あえて膨張色の白を使っている。
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