▲11月7日に第1ラウンドを迎える新設『レディスヴィクトリーラウンド』戦いを前に別府騎手を直撃
地方競馬の女性騎手によるレース『レディスヴィクトリーラウンド』(以下、LVR)が新たに創設された。参戦する5名の女性騎手(鈴木麻優・岩手、宮下瞳・愛知、木之前葵・愛知、別府真衣・高知、下村瑠衣・高知)が在籍する4つの競馬場(佐賀の岩永千明騎手は負傷のため欠場)を巡り、各地の男性騎手も交えたレースでの着順ポイントで競う。11月7日の第1ラウンド(盛岡)を前に、女性騎手最速で通算600勝を達成した別府真衣騎手(28)を直撃した。(取材・文・写真:大恵陽子)※参加女性騎手は地方のみ。
調教師である父の猛反対を押し切り騎手へ
別府真衣騎手は2年前、ハープスターと共にレースをしたことがある。2014年チューリップ賞で父・別府真司調教師が管理するクロスオーバーとJRAに初参戦した時だった。
人馬ともにJRAの芝コースは初めてながら、スタートから押して3番手を確保。積極的なレース運びで直線に入ったが、失速し13頭立て12着だった。結果こそ伴わなかったが、見せ場はつくった。
「あの時は馬もいつも以上にやる気がみなぎっていて、『よし、それじゃあ行くだけ行くか!』と先行しました。結果は残念でしたが、他の騎手から『パドックでの声援、ハープスター以上やったなぁ』と言われました」 地方競馬の女性騎手によるJRA重賞参戦は約15年ぶりだった。
別府騎手は小学校入学まで高知競馬場で過ごした。いつも近くに馬の息遣いが感じられる場所で、幼い感性は磨かれていった。
「物心ついた時から『騎手になる!』とずっと言っていました。小学生の頃は父も『うんうん、なったらええわ〜。頑張れよ』って言ってくれていたんですが、中学生の時に本格的にその意思を伝えたら、『イカンぞー!』ってすごい剣幕で怒られたんです。それでも騎手になりたかったので、毎日ケンカしましたね」 父・真司師は当時をこう振り返る。
「小さい頃は騎手になりたいと言ってくれて嬉しかったんですが、本気で騎手にさせるつもりはありませんでした。僕自身が怪我で騎手を辞めているので、やっぱり怖いな、と。怪我をするのに男も女も関係ないんでしょうが、大きな怪我が原因で引退した女性騎手もいますしね。どうしても高校だけは行ってくれと話しましたが、本人の意志が固く地方競馬教養センターを受験することになりました。そしたら不合格で、諦めてくれるんじゃないかなと思ったんですが…」 高校には進学しなかった。