東スポ2歳S 注目はスワーヴリチャード/吉田竜作マル秘週報
◆実戦での経験はアドバンテージ
今週はエリザベス女王杯、次週はマイルCS…秋のGIシリーズが続く中、本社的には注目度GI級の大事なレースが迫っている。次週土曜(19日)に東京芝1800メートルを舞台に行われるGIII東京スポーツ杯2歳Sだ。
もうおなじみとなったこの“出世レース”は、今年も多士済々の顔ぶれとなりそう。関西馬ではハイレベルなメンツが集った4回阪神芝外1800メートル新馬戦を、鮮やかな末脚で差し切ったディープインパクト産駒ムーヴザワールド(牡・石坂)が大将格となろうか。
しかし、将来が期待されるこのタッチングスピーチの全弟に当てはまるかはまだわからないにせよ、「キャリアの浅さ」=「未経験なことの多さ」ともなり、人気=結果とならないケースも出てくる。未知の可能性よりも、確実なのは実戦での経験。これは馬を扱う側にとっても、やはり大きなアドバンテージだ。
例えば、同じく4回阪神の芝内2000メートル新馬戦で2着惜敗後、同舞台の2戦目で勝ち上がったハーツクライ産駒スワーヴリチャード(牡・庄野)はその典型と言えようか。初戦の単勝オッズ1.7倍が示す通り、前評判が高かった素質馬だが、庄野調教師はデビュー前から一つの懸念材料を抱いていた。それが口向きの悪さ。
実際、新馬戦では直線で鞍上の四位が外に導こうと左側の手綱を引いた時に抵抗するかのようなしぐさ。これが原因で仕掛けが遅れ、ハナ差で涙をのむことに。続く未勝利戦にしても勝ちこそしたが、今度は道中からハミをかむようなところを見せていた。直線では着差以上に余裕があったにせよ、陣営としては明らかとなった課題を放っておけるはずもない。
「対策は取ってきた。クロス鼻革とハミをリングに替えることでね。課題はクリアしつつあると思う」と庄野調教師。口が開きにくくなる鼻革と、より矯正力の強いリング(ハミ)との組み合わせでハミの受け方…分かりやすく言うなら、自転車のハンドルがグラつくことなく、思い通りに操作できるようになった。
もちろん、これとて実戦で効果が出るかどうかはわからない。しかし、調教の段階では進歩を見せているのだから、この点はキャリア1戦の馬よりも“一日の長”があると言っていいだろう。
「馬体はもともとシュッと見せる馬で、放牧を挟んでも、それはあまり変わらない。とにかく順調にきているよ。相手は揃うけど、ここを乗り越えないことにはね」(庄野調教師)
粗削りながら背筋が凍りつくような末脚を秘めるスワーヴリチャード。その全能力が府中の長い直線で発揮される時が今から待ち遠しくてならない。