◆敗戦には必ず何らかの要因がある
キタサンブラック(牡4・清水久)が過去12戦で築いたキャリアはGI2勝を含む重賞5勝と堂々たるもの。にもかかわらず“現役最強”の評価を不動のものにできないのは、昨年の日本ダービー14着惨敗が影響しているのは明らかだ。果たして舞台を同じくする第36回ジャパンカップ(27日=東京芝2400メートル)で、かつてのトラウマを払拭し、栄冠を手にすることができるのか!?「トレセン発(秘)話」の高岡功記者が、キタサンブラックの“黒歴史”の秘密に迫った――。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
プロ野球の名監督の代名詞になっている野村克也氏の名言のひとつだ。なんで勝ったのか分からない試合は確かにあるが、少なくとも“敗戦には必ず何らかの要因がある”と名将は説いている。これは競馬にも当てはまる?
デビュー以来、毎回堅実に走ってきたキタサンブラックが、唯一馬券圏内を外し、14着に大敗したのが昨年の日本ダービー。これを明確な要因があってのものとできるか、できないか。同じ東京芝2400メートルの舞台を走るジャパンCを検討するうえで、避けては通れない重要な問題である。
管理する清水久調教師は「速いペースで行ってしまったというのもあるし、当日少しテンションが高かったことも影響しましたね」と振り返る。
1000メートル通過ラップは過去10年で最速となる58秒8。確かにペースはキツかった。ただ、そんな“激流”でも、しのいでしまうのがキタサンブラックの強さであり、真骨頂ではないのか? 少なくとも無抵抗に2番手から後退した理由にはならない。
となると状態面の問題に行き着く。この点について、より詳しく説明してくれたのは、デビュー当初からキタサンブラックの調教にまたがり、ダービー以降は毎回、最終追い切りに騎乗している黒岩ジョッキーだ。
「正直、ダービーの時は馬がかなりしんどかったんだと思います。あのころは馬が成長していく途上の段階。そんな中で(年明け1月の)デビューから連戦で皐月賞(3着)、ダービーでしたから…。追い切りは動いていましたけど、トモの状態がもうひとつでしたね」
やはり“負けに不思議の負けはなかった”のである。
「ダービーの後、休みを入れて、秋初戦のセントライト記念(1着)は体が増え、ボテッと見せていたでしょ。そこを使って体がギュッと締まった。あの菊花賞(1着)のころに、すっかり馬が完成したように思いますね。実際、その後はずっと崩れてないですから。この中間ですか? 1週前(栗東ウッド6ハロン79.5-11.9秒)の動きは申し分なかったです」(黒岩)
前に行けるうえに、上がり33秒台の切れ味を使え、併せると相手を差し返す勝負根性も兼備しているキタサンブラック。調教役として、その操作性の高さを実感している黒岩は何の迷いもなく、「キタサンブラックが最強といってもいいのでは」と口にする。
どうやらキタサンブラックの唯一の“黒歴史”になっているダービーのリベンジは十分かないそうである。(栗東の坂路野郎・高岡功)