モンドキャンノ“目覚める”前ならマイルでも/吉田竜作マル秘週報
◆距離の限界を現時点で決めつけてしまうのは危険極まりない
年が若いうちは、あまり目立った差は出ないもの。例えば後にノーベル賞を取るような人と、平均的な人生を送る人を比較しても、幼稚園のころなら大きな差はないのではなかろうか。
サラブレッドの「適性」も同じようなところがあって、年を重ねるうちに芝やダート、距離など、本質的なものがハッキリと出てくるが、若駒のうちは、それが出にくい。
“出世レース”東京スポーツ杯2歳Sも、そんなケースが多々あった。東スポ杯の前身にあたる1996年の府中3歳Sを制したゴッドスピードは、後に中山大障害を制するなど障害馬として覚醒。97年の覇者キングヘイローもクラシックでは戴冠ならず、最終的にはスプリント戦の高松宮記念で悲願のGIタイトルを手にした。この2頭の将来を2歳当時に予想することなど、不可能と言ってもいい。
裏を返せば、2歳戦のうちは、仮に将来予想される適性がある程度、見通せたとしても目をつぶることができる。そう、朝日杯FSに出走するモンドキャンノの距離の限界を現時点で決めつけてしまうのは危険極まりないことなのだ。
父キンシャサノキセキの現役時代の成績、産駒の傾向を見てもスプリント色が強いのは確か。それは陣営も認めるところで、だからこそ対策も取ってきた。調教では様々なコースを使って気持ちを乗せ過ぎないようにしたり、馬の後ろにつけて我慢を覚えさせてきた。その成果の一端が京王杯2歳Sで見せた爆発的な末脚と言えようか。
ウッドでの1週前追い切り後、「持ち乗りの子が“(腕が)しびれました”と言ってました(笑い)」とは安田調教師。最大の武器があり余るスピードなのは認めているし、「ゆくゆくはスプリンターになると思います」とキュウ舎内の誰もが口を揃える。しかし、「目覚めてしまう前の、2歳戦のうちなら…」マイル戦でも、あり余るスピードを爆発的な末脚に転化できる。これもまたキュウ舎内の共通認識だ。
将来はスプリンターとして大成するであろう、モンドキャンノの朝日杯FSのレースぶりに注目してほしい。