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【障害レースを語ろう】西谷誠騎手×高田潤騎手(3)『圧倒的に障害レースは馬券を当てやすい!』

  • 2016年12月19日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲今回が最終回、障害レースの舞台裏を余すところなく語ります!


障害の名手の特別対談も今回が最終回。高田騎手が中山大障害で騎乗予定だったニホンピロバロンは、右前繋部浅屈腱炎により長期休養へ。GIの舞台に無事に立つことがいかに難しいかを痛感します。一頭の馬が障害馬としてデビューし、勝ち上がっていく。そのために一番大切なのは普段の調教、特に初期調教だそうです。数々の名馬を育ててきたふたりの調教論とは。さらに馬券ファン必見!「障害は当てやすい」という、ふたりの気になる発言にも迫ります。(取材日:11月24日、取材:東奈緒美)


(前回のつづき)

基礎ほどしっかり、最後は馬を頼る


 西谷騎手は2011年に平地免許を返上されて、障害一筋でやっていらっしゃいますよね。

西谷 まあ、平地の免許を返したのは特別な意味はなく…。「もう要らないか」って、北沢さんや林さんとみんなで返したんじゃないかな。潤は平地も乗れるけど、俺は乗れるような体重でもないし。身長もマックスが177cmまでいってるからね。

高田 デカっ! 骨折して少し縮んだのか。

 高田騎手は両方乗っていて、ご苦労みたいなものはありますか?

高田 苦労というものはないかな。熊沢さんが何かのインタビューで「僕は平地も障害も区別したことはない」って言ってたのが、かっこいいなと思って。俺もそのスタンスで行こうと思います。区別して考えたことはありません!(ドヤ顔)

 決め顔で(笑)。馬作りに関しては、平地と障害では違いますよね?

高田 全然違う。掛ける時間も違うしね。平地の馬より障害の馬の方が、調教が競馬に結び付く部分が大きい。それだけに調教はすごく大事だと思ってる。

 同じ時期に何頭ぐらい担当されているんですか?

高田 平均したら3頭くらいかな? 1頭に掛ける時間で言ったら、俺らは他のジョッキーより長いよね?

西谷 うん。時間はその馬に合わせてだけど、ふたりとも長い方だと思う。1時間くらい乗ってるよね。

高田 その馬に対して要求することが多ければ、時間も長く掛けるし。「今日は45分乗ろう」とか時間で決めてるんじゃなくて、「ここまでできたら終ろう」っていう感じ。

西谷 特に俺らは、初期調教は念入りだよね。馬の上達スピードが早かったりするので、日にちは案外かかってないかもしれないけど。

 初期調教というのは?

西谷 初めの、それこそ木をまたぐところから始める調教。ふたりでよく言うんだけど、ここが雑なジョッキーが多いと思う。

高田 そうそう。2、3回やって飛べたら次、次って、すぐに大きい障害に進んじゃったり。そこは俺らは慎重にやる。

西谷 障害のデビュー戦もすごく丁寧に乗るしね。ある意味、潤と俺の馬券は買いづらいと思う。

高田 これからの障害人生がかかる、大事なデビューなのでね。はっきり言って、馬はどこがゴールかも分からん状態で走ってるわけやから。そういう意味では、次につながるレースをすることも大事だと思う。それに勝つ馬はそれでもしっかり勝つしね。

 どういう馬が障害に向いているんですか? 戦績も年齢も様々な馬が平地から転向してくると思うのですが。

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▲障害入りする馬は戦績も年齢も様々「どういう馬が障害に向いているんですか?」


高田 僕の場合は、年齢とかクラスとか走ってきた距離とか、そんなに気にしない。障害ってセンスが占める割合が一番大きい気がするので。短距離馬だから未勝利馬だからっていう先入観は、持たないように心がけてるかな。

西谷 うん。でも、初日である程度は分かるよね。めっちゃ走るのかダメなのか、努力型なのかとか。

高田 分かる。障害を見いひんやつはもう絶対だめやね。

 障害を見ない?

西谷 うん。全然注意して見てなくて、そのままつぶして通っちゃうとか。

高田 何かあるから適当に越えるみたいな、そういうのはナンセンス。

 それだけ基礎に時間をかけていたら、人馬のケガのリスクも減ってきますよね。

西谷 だって、最後は馬が助けてくれると思ってやってるから。

高田 そうそう。レースに行くと前をカットされて着地するところがないとか、窮屈なところで飛ばないといけない場合も出てくる。苦しい状況になった時に、普段の練習がしっかりできてる馬は飛び切ってくれると思うからね。

 馬を頼る気持ちもあるんですね。

高田 あるある。めっちゃ頼ってる。めっちゃお願いするよな?

西谷 いっつもお願いする。スピードが速いので、競馬に行ってやれることは限られてるんですよね。1頭で飛ぶなら騎手の技術だけで行けるんだろうけど、10何頭もいる中でいろんな動きをするとなると。

高田 前でひっくり返った時なんか避けられないので。そういう時は馬に「頼む!」って思うしかないから。

西谷 うまいやつなんか、そこから余裕で飛ぶしね。

 合図してないのに、勝手に飛んでくれるんですか?

高田 合図なんかできへん。咄嗟やから人間は何もできない。そこでちゃんと飛んでくれたりしたらもう……めっちゃ愛撫したくなる!!

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▲西谷「馬にいっつもお願いする」高田「ちゃんと飛んでくれたりしたらめっちゃ愛撫したくなる!!」


 日頃積み重ねている馬との関係が、そこで活きてくるわけですね。

西谷 だから、馬を作っていくのって面白いんだよね。最初にも言ったけど、潤の勉強熱心さは本当にすごいから。海外に行ったり、最近では馬術のオリンピック選手に習いに行ったり。いろんな練習方法を持ち帰ってくれるから、すごく勉強になるよ。

 出し惜しみはしないんですか?

高田 ここではしない。自分も何かもらえるしね。誠さんはすごいよ。例えば、レース後に他のジョッキーから声を掛けられることって内容はだいたい同じなんだけど、誠さんだけは全然違うこと言う。しかも一番的を得てる。普通の人は全然気づいてないけど、誠さんには気づかれてることってよくあるんだよね。

西谷 潤もそうだよ。潤に言われたことは腑に落ちるっていうか、言われたくないことも見抜かれるから。

高田 そうそう。言われたくないところもお互い突くからね(笑)。他のジョッキーだったら絶対に分からないところで仕掛けてるのに、誠さんはズバッと言い当てるし。まあでも、誠さんにはそこを隠そうとも思わない。お互いレースでの考え方もわかるから。障害って前半で競り合うことが多いんだけど、ふたりが前でバンバンやり合うことはまずないからね。

西谷 ないない。絶対ないね。

高田 そんなの、後ろの馬が有利になるだけだから。誠さんが逃げてて俺が並んで行ったとしても、誠さんは絶対に動かない。俺が前に出ないのを分かってるから。そうするとペースも落ちるし、落馬率も下がると思う。

西谷 俺らが前に行った方が、事故は少ないんだよね。

 レースの安全を作ってるんですね。

高田 そうそう。いいこと言うね!

せっかく稼げるチャンスがあるんだから


 障害の世界は乗り手も減ってきていると言われますが、おふたりはどう感じていらっしゃいますか?

高田 ジョッキー自体が少ないので、比例して少なくなるのはしょうがないけど、免許があるんだから、若手がどんどん挑戦すればいいのになっていうのは思う。稼げるチャンスがあるのに、何で取りに行かないのかなって。たしかに危険度は上がるけど、ケガが怖いんやったら何でジョッキーなったん? って思うしね。

西谷 潤は本当にすごいよ。障害に乗ったことがない若手に講習を開いて、障害の魅力を伝えたりしていて。ファンの人にももっとレースを見てもらいたいって、自分で競馬場に頼んでバックヤードツアーを組んだり。このツアーは人気があって、すごい数の応募があるんですよ。

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▲「若手騎手に講習を開いたり、ファン向けにバックヤードツアーを組んだり、潤は本当にすごい」


 そういうのに参加すると、馬券にも役立ちそうですよね。

高田 そうそう馬券もね、平地より障害の方が断然当てやすいと思う。だって、戦ってるメンバーがいつも同じやん。未勝利とオープンしかないし、レースをずっと見ておけば力関係が分かるから。

西谷 圧倒的に当てやすい。今年なんて「石神、平沢、高田」、この3人を買っとけばほとんどプラスでしょう。

高田 俺なんて、4年連続で複勝率5割超えてるからね!(ドヤ顔)

西谷 儲かっちゃうよ〜(笑)。平地は難しいもんね。上に行けば行くほど難しいよ。潤も俺もGI馬の調教に乗ってるけど、「これなら負けへんやろう」って思った馬が平気で負けてくるからね。

二人 障害レースをよく見て、馬券で儲けてください!

(文中敬称略、了)


※次回の更新日ですが、取材のスケジュールの都合上、現在未定となっております。予めご了承ください。



【読者プレゼント】


西谷騎手、高田騎手2名のサイン入り色紙を、抽選で3名様にプレゼントいたします。ご希望の方は下記のフォームから、必要事項を明記の上、ご応募ください。

※受付は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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