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世界最高賞金レース、G1ペガサスワールドCの発走迫る

  • 2017年01月25日(水) 12時00分


◆2頭のガチンコ対決は絶対に見逃せない

 鳴り物入りでスタートするG1ペガサスワールドC(d9F)の発走が、今週土曜日(28日)に迫っている。

 ドバイワールドC(US$1000万)をしのぐ、賞金総額US$1200万(日本円にしておよそ14億円)が設定された、世界最高賞金レースとして施行されるのがペガサスワールドCだ。提唱したのは、アデナスプリングスの名のもとで生産と競馬を行っている他、ガルフストリームパーク、サンタアニタという東西の主要場を含む5つの競馬場を所有する、ストロナーク・グループの総帥フランク・ストロナーク氏である。

 莫大な賞金をいかにして積み上げたのかと言えば、ペガサスワールドCの登録料を100万ドルという途轍もない価格に設定し、12頭をフルゲートとして、12頭分の出走枠を売り出したのである。売れ残った枠は、アデナスプリングスが保有する予定だったが、米国のポール・レダム氏、ジム・マッキングヴェール氏、愛国のクールモアスタッドらが次々と手を挙げ、アデナスプリングスは1枠を保有しただけで完売となって、瞬く間に1200万ドルが調達できたのである。

 枠の保有者は、自らの所有馬を出走させる権利を得る他、放送権料などこのレースを巡ってあがる収益の12分の1を受け取る権利がある。

 保有枠は自分で使っても良いし、他の馬主への貸与、転売することも可能だ。例えば、昨年の全米3歳チャンピオン・アロゲイト(牡4、父アンブライドルズソング)の馬主ジャドモントファームス社は、枠を保有していなかったが、適当な出走馬がいないクールモアスタッドから、出走枠を購入する形で出走に漕ぎ着けている。

 なお、今年はフロリダ州のガルフストリームパークが舞台となるが、第2回の来年はカリフォルニア州のサンタアニタでの開催となることを、関係者が既に示唆している。

 新設競走ゆえ、少なくとも2年間は重賞格付けなしで施行されるのかと思っていたら、これまでガルフストリームパークで2月上旬に行われていたG1ドンH(d9F)を「名称変更した」という形をとったため、今週行われる競走にもG1の格が付されることになった。

 前述したように、明けて4歳を迎えた世代の最強馬アロゲイトが出走するほか、5歳だった昨年の成績が8戦して7勝、唯一の敗戦がアロゲイトに敗れたG1BCクラシックという、最強古馬カリフォルニアクローム(牡6)も、引退前の最後の一戦として出走することになっており、つまりはここで早くも、BCクラシックの再戦が実現するのである。

 24日に発表になる2016年の世界ランキングでも、1位と2位になることが確実視されている2頭のガチンコ対決は、絶対に見逃せないものとなりそうだ。

 しかし一方で、強すぎる2頭が出てくるためか、2頭以外の顔触れはいささか淋しいものとなった。

 23日(月曜日)正午に設定されていた出馬投票を迎えてなお、すったもんだがあったのが、ガンランナー(牡4、父キャンディライド)だった。同馬が拠点としているルイジアナ州フェアグラウンズ競馬場で、昨年末、馬ヘルペスウィルスの感染馬がいることが発覚。フェアグラウンズ競馬場が検疫の対象となり、馬の移動が禁じられてしまったのである。

 ガンランナー自身は元気で、出走することを前提に調教を積まれていたのだが、フェアグラウンズから外に出られないのであれば、ペガサスワールドC出走は不可能である。

 新たな感染馬が3週間にわたって出なかったことから、もともと病馬が出ていなかった厩舎については、馬の移動禁止を解除することをフェアグラウンズが決定したのが、出馬投票を2日後に控えた21日(土曜日)で、これによりガンランナーの移動は可能になった。

 ちなみにガンランナーを共同所有するウィンチェルサラブレッズとスリーチムニーズファームのパートナーシップは、ペガサスワールドCの出走枠を保持していなかったが、所有馬ウォーエンヴォイを出走させる予定だった馬主ミック・ルイス氏との間で、ガンランナーが出走可能になった暁には、ウォーエンヴォイの出走枠をガンランナーに譲ることで、両者は合意をしていた。

 ガンランナーにとって最後の難関は、ガルフストリームパークのオフィシャルが、フェアグラウンズに在厩していた馬の入厩を認めるかどうかで、ガルフストリームパークは22日(日曜日)にガンランナーの陣営に対して、新たな血液テストと鼻腔内粘膜のテストを行い、両方ともに陰性であった場合に、ガルフストリームへの入厩を許可すると通達。

 これに対しガンランナー側は、血液テストが陰性であれば、入厩を受け入れるべきと主張。というのも、血液テストで陰性でも鼻腔内粘膜の検査では陽性の結果が出る確率が15%ほどあるという専門家の指摘があり、万一陽性が出てガンランナー自身が検疫と移動禁止の対象になっては元も子もないというのが、ガンランナー側の言い分であった。

 結局どうなったかと言えば、23日の出馬登録でガンランナーは登録を行ったのだが、ガルフストリームパークはこれを受理せず、ウォーエンヴォイを含む12頭で枠順抽選が行われることになった。

 その後一部では、ガンランナーの陣営がガルフストリームパークを相手どり訴訟を起こすのではないかとの憶測が流れたが、関係者はこの噂を否定している。

 昨年春のG1ケンタッキーダービー(d10F)3着馬で、秋にはG1BCダートマイル(d8F)で2着となった後、G1クラークH(d9F)で念願のG1初制覇を果たしたガンランナーは、実績的に見てカリフォルニアクロームとアロゲイトに次ぐ馬で、ブックメーカーの前売りでもオッズ11〜16倍で3番人気に支持されていた。

 そのガンランナー不在となると、実績的に3番手に浮上するのは、昨年9月のG1ウッドウォードS(d9F)勝ち馬で、ガンランナーが勝ったG1クラークHは3着だったシャーマンゴースト(牡5、父ゴーストザッパー)か。あるいは、一昨年のG1トラヴァーズ(d10F)勝ち馬で、昨秋のG1BCクラシックが3着だったキーンアイス(牡5、父カーリン)か。

 ブックメーカーによっては、重賞初挑戦となったG3ディスカヴァリーS(d9F)で2着となった後、前走ガルフストリームの一般戦(d8.5F)を快勝したネオリシック(牡4、父ハーランズホリデー)という上がり馬を、3番手評価としている社もある。しかし形勢はどこから見ても、2強の一騎打ちだ。

 枠順発表前のブックメーカーの前売りでは、カリフォルニアクロームをわずかの差で1番人気とする社がほとんどだったのだが、枠順抽選の結果、アロゲイト1番枠に対して、カリフォルニアクロームは大外の12番枠に回ったため、アロゲイトを1番人気に浮上させるブックメーカーが増えている。

 カリフォルニアクロームのヴィクター・エスピノーザ、アロゲイトのマイク・スミスという両ベテランの駆け引きも含めて、至高の一騎打ちを堪能したいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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