骨折から驚異的な回復の1勝馬 アカカ/吉田竜作マル秘週報
◆無事に復帰…以上の走りをエルフィンSで見せてほしい
東西の金杯で年が明けたかと思えば、もう1月も残りわずか。新馬戦のタイムリミットが刻一刻と迫る中、関西圏では雪による開催の順延などが加わり、各陣営が難しい調整を強いられている。桜花賞、皐月賞へ間に合わせたい馬たちを抱える関係者には、もどかしい日々が続いていることだろう。
そんな中、骨折放牧から、ようやく帰厩してきたのがアカカ(牝・音無)。昨年6月の新馬戦(阪神芝外1800メートル)でデビューし、そこでは7着に敗れたものの、続く未勝利戦(中京芝1400メートル)で5馬身差圧勝を決めた逸材だ。
当時は「桜花賞が楽しみになった」と音無調教師のトーンも上がりっ放しだったのだが、間もなく左前脚の骨折が判明。6か月の休養を余儀なくされた。「楽しみにしていたんだけどなあ〜。(桜花賞に)間に合ってもギリギリというところか」と半ば諦め気味に音無調教師も肩を落としていたものだが…。
このアカカ、驚異的な回復どころか、確かな成長も見せ、帰厩後は順調に調教ピッチを上げている。
「骨折したところもきれいに治っているし、馬も少し大きくなったかな。帰厩してからはホント、順調な調教ができているよ」(音無調教師)。とはいえ、レース選択は難しい。桜花賞は4月9日。順調に回復しているとはいっても、やはり骨折明け。余裕を持たせたローテーションで本番に臨みたいところだが、1勝馬のアカカの場合はトライアルでは抽選対象になるだろうし、かといって自己条件を使っていては、どうしてもローテが詰まってくる。
そこで音無調教師が選択したのがオープン特別のエルフィンS(2月4日=京都芝外1600メートル)。これは確かに“妙手”と言えそう。
過去10年を見ても、エルフィンSはフルゲートに満たない時が多く、抽選なしで出走できる可能性が高いのがまず一つ。そして何よりローテーションに選択肢ができるのが大きい。
例えば昨年のエルフィンSを制した音無厩舎の先輩にあたるレッドアヴァンセはその後、放牧に出して馬の様子を見ながら、トライアルをひと叩きして本番へと臨んだ。要は使った後に十分なリフレッシュ期間を設けることができるし、順調ならば本番までにもう一戦挟むことも可能なのだ。
ちなみにエルフィンSからの直行組では、09年の勝ち馬レッドディザイアが桜花賞で2着、11年のマルセリーナに至っては見事に桜花賞で戴冠。ぶっつけでも結果を出せるレース間隔なのは証明済みだ。もちろん、勝たないと始まらない話だが、アカカはそれだけのスケールを感じさせる。無事に復帰…以上の走りをエルフィンSで見せてほしい。
スペースはもうあまりないが、クラシックに間に合わせたい牡馬も紹介しておきたい。15年セレクトセールで1億6000万円もの高値がついた逸材ジェニアル(牡=父ディープインパクト、母サラフィナ・松永幹)だ。
先週の20日にゲート試験をパスしたばかりなのだが、これが電光石火。「水曜にゲートを見せに行って、木曜に出したらスッと出てくれたから。これなら金曜に受けられるなって感じ」と松永幹調教師。想像以上のセンスの良さに、予定を繰り上げたのだという。
「バランスが良くて、筋肉質ないい体をしている。骨瘤などで(入厩は)遅れたけど、今は心配なところもないからね。何とか新馬戦があるうちにデビューできれば」
まさに“秘密兵器”と呼ぶにふさわしい存在。現実的に見ると皐月賞はさすがに厳しいかもしれないが、ダービーには…。混戦の牡馬路線をさらに難しくさせるような活躍を期待している。