馬の道の“達人”ヘルパーの織川さんが自信 プラチナヴォイス「走る」/トレセン発秘話
◆走る馬は走ってくれるから大丈夫さ
デビューからの平地2走で10秒1、6秒2のタイムオーバー負けを喫していた馬=ユウキビバワンダーが、先週の中京障害未勝利戦で見せ場たっぷりの4着に激走した。この時、パドックで馬を引いていたシーンを思い出し、“またこの人か”と…。
「田代さんの馬はよく走る。メイショウトリトン(現古馬1000万下)を勝たせてくれたし、(3歳の)ブルベアバブーンはオープン馬だからね」(藤沢則調教師)
トレーナーの言う通り、田代算秋さんが担当する馬は本当によく走る。この世界を定年で一旦リタイアした後、ヘルパー(補充員)として藤沢則キュウ舎で働く通称“カズさん”。熟練工のように長年、培った経験と技術がここ一番で馬を走らせているのか? キュウ舎の中には「何かベテランならではの秘訣みたいなものがあるんじゃないかと思って、田代さんの仕事ぶりをチェックしている」という人もいるくらいだ。
田代さんだけでなく、ヘルパーとして働く人の担当馬はよく走る傾向にある。キュウ務員として長年、経験を積み、華やかな実績を築いたうえで、なおかつ定年後も馬に携わりたいという意欲のある人がヘルパーをしているのだから、それも当然といえば当然か。
きさらぎ賞に出走するプラチナヴォイスもヘルパーの織川昭則さんが担当している馬だ。織川さんといえば、かつて鶴留キュウ舎で1985年のエリザベス女王杯を制したリワードウイングや91年の桜花賞馬シスタートウショウを担当していた達人である。
プラチナヴォイスの前走(京都2歳S6着)を「ちょっと稽古をやり過ぎてテンションが上がってしまった」と話す織川さんは「ああいう調整が良くないと分かったのだから、あの一戦は無駄ではない。今度は直前にサッとやるだけにとどめたし、連勝したころの雰囲気に戻っているよ。あとは自然体でやっていれば十分。走る馬は走ってくれるから大丈夫さ」
なんだか、その柔和な語り口を聞いていると、こっちも自信が湧いてくる。サトノアーサーの相手はこのプラチナヴォイスで決まりだ。(栗東の坂路野郎・高岡功)