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【騎手から調教師へ】田中博康騎手(1)『師匠の姿に憧れて…デビュー時から“いつかは調教師に”』

  • 2017年02月13日(月) 12時01分
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▲今月のゲストは田中博康騎手。調教師転身が決まり騎手としては残りわずか、今の本音に迫ります


「武幸四郎騎手、田中博康騎手らが調教師試験合格」――昨年12月8日に舞い込んできたビッグニュース。今月はその田中博康騎手(31・美浦所属)を直撃します。難関の調教師試験を一発合格。その裏には、誰にも打ち明けずひとり闘ってきた日々がありました。GIジョッキーに調教師転身を決心させたものは何だったのか。新たなステージの入り口に立った田中博康騎手の本音に迫ります。(取材:赤見千尋)


開業は来年3月「一年間でやりたいことが沢山」


赤見 調教師試験合格おめでとうございます。31歳という若さで、しかも一発合格! いけると思っていましたか?

田中 ありがとうございます。さすがにいけるとは思ってなかったですが、早いうちに合格したかったので、一発でいきたいなとは思ってました。本当は一昨年受けようと思ったんです。だけど、自分の中で明確なビジョンが定まっていなかったので、1年遅らせて。その分、しっかり勉強することができました。

赤見 何回か受けて手応え掴む方が多いですけど、「受かっちゃった」という感じではないんですね。

田中 うーん、まあ、そうですね(苦笑)。前の年に比べたらやれることをしっかりやりましたし、本当にうまくいったなという感じです。

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▲合格発表時の記者会見、左から和田勇介さん、田中博康騎手、林徹さん(撮影:佐々木祥恵)


赤見 開業は今年ですか?

田中 いえ、来年3月に美浦で。

赤見 来年なんですね。技術調教師の一年間は、どんなことをしていくんですか? この取材は栗東でさせてもらっていますが、3週間栗東に滞在しているそうですね。

田中 はい。今は角居厩舎で勉強させてもらっています。まだジョッキーの立場ではあるんですけど、やりたいことを挙げるとたくさんあって。馬の管理法を専門的な人に学びたいし、行っていない国もありますし。1年でやり切れるかなって考えると、意外と時間がないものですね。

赤見 頭の中は徐々に、騎手から調教師へと意識が変わってきていますね。

田中 調教師になるっていう意識は強いですね。ジョッキーとしては残り1か月。(武)幸四郎さんなんかは、ジョッキーとしての思いも強いのかな? どうなんだろう。

赤見 よく話すんですか?

田中 よく話しますね。調教師としては同期になりますし、開業のタイミングも一緒になりそうですし。今後どうやっていこうかっていう相談をしています。

赤見 去年の11月あたりから騎乗数を絞っていますが、そこはもう試験に集中で?

田中 そうですね。お世話になっている馬主さんや師匠の高橋祥泰先生とか、そういう依頼だけお受けして。その分勉強の時間を確保できて、自分なりに結構できたかなとは思います。毎日朝3時に起きて勉強して。

赤見 えっ? 調教の前ですか?

田中 はい。朝型なので(笑)。3時から2、3時間やって、試験の直前は調教の合間も部屋に戻って勉強して。最後の方は勉強漬けでした。

赤見 よく耳にするのが、範囲が広すぎて何から勉強していいかわからないって。

田中 たしかに、最初は何からやっていいかわからないです。最初は結構甘く考えていて、教科書だけで勉強していたんですけど、それだと全然頭に入って来ないし。

赤見 誰かに相談したりも?

田中 いや、ジョッキーをやってる限り、その相談ができなかったんですよね。試験を受けることを誰にも言ってなかったので。周りで受けてる人がいて、去年の夏に話したのが最初です。関西に“勉強会”があって、「そこに参加しようかな」っていう話をしたんです。驚いてましたけど、「そうなんだ。じゃあ一緒にやろうか」ってなって。しばらくは、その人以外誰にも言わなかったです。

赤見 祥泰先生には?

田中 師匠にはもちろん伝えましたが、それも試験を受ける前だから9月ぐらいですね。夏の北海道滞在から美浦に戻った時に、師匠のところに真っ先に行って。それまで2年くらい栗東にいたので、久しぶりの美浦だったんですけど、「今年から受けることにしました」とお話して。もともとは、師匠の姿を見て調教師になりたいと思ったんです。

赤見 それがきっかけだったんですか。

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▲「師匠の高橋祥泰先生の姿に憧れたことが、調教師を意識したきっかけだったんですね」


田中 最初は漠然とですけどね。師匠は本当にすばらしい先生で、「かっこいいな」って思うような仕事をされている方なんです。「ゆくゆくは僕も調教師になりたいな」って、デビューした時から憧れを持っていました。自分の中で本当に決心したのは、今から3年前ぐらいですね。

赤見 フランスへの長期遠征の後ですね(2011年に9か月滞在)。

田中 はい。やっぱり、フランスへ行ったことが一番大きいです。ジョッキーをやっていく中でレース以外の経験をたくさんして、そこで考えさせられたんです。

赤見 以前のインタビューでも(2012年4月)、日本のジョッキーは追い切りとレースに乗るだけだけど、フランスやベルギーはジョッキーが馬を曳いたりするっておっしゃってましたよね。

田中 向こうのジョッキーは何でも出来るんです。それに比べて同じジョッキーでも、自分は何も出来てないなって。馬の基本もわかっていない。そこからいろいろ考えるようになって、意識を持って馬に乗るようになって。

赤見 その後も、チャンスがあれば海外に脚を運んでましたね。

田中 毎年のように行かせてもらっています。海外遠征を続けて行く中で、「こういうふうに馬に乗りたい」というのが見えてきて。「こういうふうに馬を作っていきたい」って目指すものが固まったのが、去年の4月にフランスに行った時なんです。そこで「調教師試験を受けよう」と決意しました。

赤見 イスパーン賞(仏GI)に出走するエイシンヒカリの調教をつけたんですよね(レースは武豊騎手)。それが大きかったですか?

田中 たまたまフランスに行く時期が重なったんですけど、ああいう素晴らしい馬に跨れたことも1つのきっかけですね。栗東にいる頃から見ていたので、「あの馬に乗れるんだ!」って。僕が毎日乗っていたわけはないですけど、大きな舞台で結果を出すという馬作りに携われたことは、大事な経験になりました。

(次週へつづく)


【プレゼント】田中博康騎手ら、人気騎手の直筆サイン入り卓上カレンダーを抽選で16名様に


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▲(写真は福永祐一騎手分)


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福永祐一騎手、小牧太騎手、藤岡佑介騎手、中谷雄太騎手、坂井瑠星騎手、菊沢一樹騎手、田中博康騎手、M.デムーロ騎手(※順不同)

▼田中騎手のカレンダーに応募された方からの、田中騎手への応援メッセージをご紹介します(一部抜粋)

「調教師試験合格おめでとうございます。初出走時には必ず馬券買います」

「調教師おめでとうございます。海外遠征も含め競馬への真摯な姿勢が素晴らしいと思います。世界で活躍できる競走馬を育ててください」

「まだまだ騎手として活躍出来ると思っていたので、調教師合格のニュースを見たときは驚きました。また新たな道が待ってますね。これからも応援しています。頑張って下さい」

「エリザベス女王杯の時期になる度にクィーンスプマンテの大逃げを思い出します。今後は調教師としてまたいつまでも記憶に残る馬を送り出して下さるのを楽しみにしています」

「若くして調教師転身、期待しています。海外での研修の成果を見せつけろ!!」

「デビュー前から応援してきたので、博康くんの騎手人生の全てを見る事が出来たのが、私の自慢です。騎手としての博康くんを見られなくなるのはすごく寂しいけど、調教師としての博康くんの事も応援しています。今までどうもありがとう」

「グリーンファーム愛馬会会員の自分としては、クィーンスプマンテと田中博康騎手のエリザベス女王杯は忘れられない思い出のレースです。調教師として新たな道を歩むことになる田中博康騎手。きっと素晴らしい調教師になってクィーンスプマンテのような記憶に残る名馬を育成されると信じています。応援しています!」

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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