▲リアルスティールのドバイ遠征にも同行、青木師が間近で感じた矢作師の人間力とは
『2016年全国リーディング 特別企画』
2014年以来、2度目のリーディングに輝いた矢作厩舎。調教師、ジョッキー、スタッフ、門下生らのインタビューから、“厩舎力”に迫る特別企画。今週からは「矢作イズムを引き継ぐ者たち」と題し、門下生のインタビューをお届けします。
最初の登場は、来月に新規開業を控える青木孝文調教師です。技術調教師として小桧山師(美浦)、矢作師(栗東)に師事。尊敬するふたりの師匠に学んだ「人を大切にする」ことが、間もなく船出を迎える青木厩舎の道標となりました。
(取材・文:不破由妃子)
「勉強したい」という意欲を絶対に拒まない
──開業間近のお忙しいところ、今日はありがとうございます。青木先生は美浦の所属ですが、昨秋、技術調教師として矢作厩舎に勤務されたそうですね。それにはどういった経緯があったのですか?
青木 2014年に開業された森田先生(森田師も矢作厩舎の門下生)と共通の知人がいまして、森田先生の開業パーティーに呼んでいただいたんですが、そこに矢作先生もいらっしゃったんです。たまたまなんですが、ちょうどその頃、矢作先生の著書を読んでいて、
「人を活かしながら結果も出しているというのはすごいな」と、先生のやり方と考え方に惹かれていたところだったんです。そんな矢先にお会いすることができて。
──まさに“縁”を感じさせる出会いですね。当時は伊藤正徳厩舎に調教助手として勤務されていたんですよね?
青木 そうです。調教師試験を受けている段階だったんですが、一次試験は二度ほど突破していたので、パーティーで矢作先生に「あと一歩なので頑張ります」みたいなことをお話させてもらったんですよ。そうしたら、それを覚えてくださっていたようで、調教師試験に受かった際に、合格祝いとして矢作先生からドンペリが届いたんです。
──パーティー以来、一度もお会いになっていなかったんですか?
青木 はい。2年以上、お会いしていなかったですね。そもそも初対面がお酒の席でしたし、まさか覚えてくださっているなんて思っていなかったので、すごくビックリして。すぐにお礼のお電話をしました。
──その後、リアルスティールのドバイ遠征(2016年3月)にも同行されたとか。
▲リアルスティールがドバイターフを勝利、厩舎念願の海外初勝利に立ち会うことができた(撮影:高橋正和)
青木 リアルスティールを担当している柿崎助手とは、高校卒業後に研修で行っていた浦河のBTCの同窓だったこともあり、先生にダメ元で「何もできませんが、勉強のために同行させてもらえませんか?」とお願いしたら、「おお、来い来い」みたいな感じで快く受け入れてくださって。
──矢作先生は、そこで断る方ではありませんよね。
青木 そうなんですよね。秋に技術調教師としてお世話になったときもそうでしたが、
「勉強させてください」「教えてください」というこちらの意欲を絶対に拒んだりしないし、なんでも隠さずに教えてくれる。人に教えたところで、簡単に真似をすることはできないという確固たる自信を持っていらっしゃるからでしょうね。