スマートフォン版へ

桜花賞の有力候補誕生/フィリーズレビュー

  • 2017年03月13日(月) 18時00分


◆阪神の内回り1400mで通ったコース考えると着差以上の完勝

 阪神JFでソウルスターリングには完敗したものの、阪神1600mを1分34秒5で乗り切っているレーヌミノル(父ダイワメジャー)が断然の人気を集めたこのレース、勝ったのは最後方近くから大外に回ったM.デムーロ騎乗のカラクレナイ(父ローエングリン)だった。

 早めに先頭に立ってインに切れ込んだレーヌミノルとの差は半馬身(0秒1差)だが、阪神の内回り1400mで通ったコース考えると、着差以上の完勝である。

 毎週毎週、日曜日のメインを制しているM. デムーロは、すでにC. ルメール(コンビはソウルスターリング)に代わって、クイーンCを勝ったアドマイヤミヤビ(父ハーツクライ)に騎乗するとされているので、カラクレナイの桜花賞のジョッキーは未定だが、土曜日のアネモネSを制したライジングリーズン(父ブラックタイド)とともに、桜花賞の有力候補誕生である。

 最近15年間の桜花賞で3着以内に好走した計「45頭」のうち、チューリップ賞に出走していた馬(直前とは限らない)が過半数の「23頭」もいるのに対し、直前のフィリーズレビューをステップに桜花賞で3着以内に好走した馬は、「6頭」にとどまっている。

 今年も、同じ阪神の1600mのチューリップ賞を1分33秒2で圧勝したソウルスターリング(父フランケル)が高い評価を受けるのは当然だが、カラクレナイにも強気になれる材料はある。フィリーズレビューが直前ステップだったのは次の6頭。

16年アットザシーサイド  FR2着→桜花賞3着
12年アイムユアーズ    FR1着→桜花賞3着
08年レジネッタ      FR3着→桜花賞1着
05年ラインクラフト    FR1着→桜花賞1着
05年デアリングハート   FR2着→桜花賞3着
02年ブルーリッジリバー  FR4着→桜花賞2着

 05年、このトライアルと桜花賞を連勝したラインクラフトは、フィリーズレビューを当時のレースレコードで勝っていた。そのレースの中身は「46秒9-34秒3」=1分21秒2だったが、カラクレナイの時計もレースレコードであり、中身は「46秒6-34秒4」=1分21秒0である。ラインクラフトのそれは改修前の記録であり、比較は難しいが、オーバーホールして3歳初戦にフィリーズレビューを快勝し、桜花賞に挑戦したラインクラフトはそのとき【3-0-1-0】。出走時期がほとんど同じカラクレナイも【3-0-0-1】。

 カラクレナイの父ローエングリンは阪神1600mのマイラーズCを2勝した記録がある(阪神で計3勝)。母の父アグネスタキオン(皐月賞)は、先日引退された長浜博之調教師の管理馬で、その母アグネスフローラ(桜花賞)も、さらにその母アグネスレディー(オークス)もクラシックホース。また、祖母レッドチリペッパー(父アンブライドルド)は、当時はまだ外国産馬にクラシック出走の道は開けていなかったが、3歳春のクイーンCでその年のオークス馬ウメノファイバーと接戦の2着しているマイラータイプ(富士S1着など)だった。カラクレナイは自身の成績以上に桜花賞が合っているのではないかと考えることができる。

 470キロ台の馬体は細身に映るが、しっかりしたトモが素晴らしく、いかにも爆発力を生みそうなバネがある。鞍上はだれが合うだろう。

 レーヌミノル(浜中俊騎手)は、先行勢が「前半33秒5-45秒5-57秒3→」で飛ばすハイペースを正攻法の好位差しの形になったため、速い流れに巻き込まれ、自身のバランスは「34秒2-11秒9-35秒0」=1分21秒1。ちょっときびしいバランスになってしまった。

 4コーナーを回って先頭に立とうとする瞬間、斜めに突っ込んだと映るほど急激に内側に斜行し、内にいたジューヌエコール(父クロフネ)などの進路をカットしてしまった。直線、ずっと右ムチを入れながら外のネオリアリズムに寄り通しだったミッキーアイルのマイルCSとは異なり、今回は意図的とはいえない。ただ、内にささったレーヌミノルが他馬の進路をなくすのを承知で(浜中騎手くらいの経験と騎乗技術があれば)、矯正し立て直そうとしていないから、本当はもっと重いペナルティーが課せられても仕方がないだろう。開催4日間の騎乗停止は、まだミッキーアイルの著しい斜行から半年も経っていないことを考えると、温情にも近い軽度のペナルティーだった。

 浜中俊騎手(28)は先週終了時点、ランキング17位で【11-15-15-86】。勝ち切れないから星が伸びず、明らかに本来の浜中騎手らしいリズムを欠いていたから、必死で、夢中で勝ちたかった気持ちはわかるが、こういう斜行はもっとも大切な周囲の信頼を失いかねない。トップ騎手になるために、いまこそ問われているものがあるはずである。

 最後方にいたゴールドケープ(父ワークフォース)が、上がり最速タイの34秒4で伸び0秒3差の3着。前つぶれの展開に恵まれたのはたしかだが、追い込む形でこれまでとは違った良さが出たのは、桜花賞の切符確保とともに大きな幸運。ワークフォース産駒らしいスタミナを生かすレースが可能になったかもしれない。母の父デュランダルも、自身の競走成績とは異なる特徴を伝えている。エリンコートではないが、オークスでは忘れないでおきたい。

 4着ジューヌエコールは、大きな不利のあったあとも伸びようとしていたからとくに後遺症はないと思えるが、折り合い面の課題があった馬だけに、やっぱり今回も少し行きたがるあのレース運びで、最後に本当に伸びるのか確認したかった。出走可能な賞金額に達しているとはいえ、肝心のテーマが不明のまま残ってしまった。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング