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JRA日高育成牧場展示会

  • 2017年04月12日(水) 18時00分
展示会に集まった関係者

展示会に集まった関係者


すっかり見違えるように「大人」になった生産馬

 去る10日(月)、浦河のJRA日高育成牧場にて、この時期恒例の育成馬展示会が行われた。やや風が強いながらも朝から良く晴れ、会場の日高育成牧場には次々に生産者や育成業者、調教師などの関係者が集まった。

 午前10時。昨年、日高を始め各地のセリ市場で購買された60頭の育成馬のうちの57頭が、5班に分けられ、まず比較展示からスタートした。

 すでに各馬には来る4月25日に中山競馬場で開催されるJRAブリーズアップセールでの上場番号が付されている。最初は4頭の非JRAブレッド馬を含め、12頭の牡馬が登場した。職員に交じり、BTC育成調教技術者養成研修を今週金曜日に修了する34期生たちも育成馬の手綱を握る。これら研修生たちは、昨秋以来、JRA育成馬の初期馴致から騎乗まで、実地研修の一環として間近に接してきた。後述するが、展示の後は実際に彼らも育成馬に乗り、騎乗供覧を披露することになっている。

 比較展示が始まると、待ちかねたように多くの関係者がそれぞれ名簿を片手に並べられた各馬の間を歩いて、1頭ずつ丹念に見学した。自身の生産馬に対面するためにここを訪れた生産者の姿もあった。すっかり見違えるように「大人」になった生産馬を前に、記念撮影する場面も見られた。

 1班あたり10頭から13頭が登場し、それぞれ10分程度で入れ替わる。昨秋以来、ここで調教を積まれてきた育成馬はどれもみな大きく成長し、体高160センチ以上、馬体重は400キロ台半ばから中には500キロを超えるサイズの馬もいる。

 ただ、それぞれ個体差もあって、全ての育成馬が一様に大型化したわけではなく、中には体高153.5センチもいれば、166.5センチのもいる。また馬体重でも、最軽量で417キロ、最も重い馬で529キロと、かなりの幅がある。まだデビュー前の2歳春であり、これからグングン馬が成長してくるケースもあるので、今の段階での体格差はあまり気にするべきではないのかも知れない。

 調教メニューとしては、先月末の時点で坂路にて3ハロン16-16-16秒前後まで進めている。またゲート練習も調教の前後に欠かさず実施しており、前扉を閉めた状態でゲートに入り、後扉を閉めて駐立。そののちに前扉を開いて常歩で出るというところまでは調教されている。

 牡3班、牝2班に分割されての比較展示が終了した後、隣接するダート1600m馬場に移動しての騎乗供覧となった。

 騎乗供覧は、牡2班、牝1班の、合わせて26頭であった。例年以上に今年は騎乗供覧を見合わせる育成馬が多く、牡が10頭、牝が11頭と計21頭が比較展示のみであった。

 これは、あくまで中山競馬場でのブリーズアップセールに向けて、万全を期すための措置であり、故障馬が多いわけではないらしい。少しでも気になる部分のある育成馬は、敢えてここで無理をさせずにおくという考え方によるものだという。

 今回の目当ての1頭であった静内農高生産のゴートゥザノースの15(牝・父バゴ)も、比較展示には引き出されていたが、この騎乗供覧は大事を取り、休ませることになった。

ゴートゥザノースの15

ゴートゥザノースの15

 当初、騎乗供覧に名前があったので楽しみにしていたのだが、展示後に歩様がちょっとぎこちなくなったらしく、それで自重する判断が下されたのだという。

 騎乗供覧は、2頭併せで実施され、牡馬12頭がまず馬場を半周して、向こう正面まで移動し、800m地点あたりからスタートする。キャンターで駈け出し、徐々に速度を増して、残り2ハロンから計測を開始する。昨年までは馬によってはかなりのスピードが出ていたが、今年は併走してペースを守るという方針が徹底されており、大半の育成馬が13秒〜14秒台できっちりと併せて追われていた。内外大きく離れるとか、前後に著しい差が生まれるようなことはなく、抜けた速い時計も出なかった。

 2ハロンの合計で最速を記録したのは、エフテーストライク(牡・父サウスヴィグラス)の15とイシュタルキャスト(牡・父ロードカナロア)の15の組、及び、ウインディーパレード(牡・父ベーカバド)の15とエリモエポナ(牡・父エンパイアメーカー)の15の2組が出した25秒7。

左エリモエポナの15、右ウインディーパレードの15

左エリモエポナの15、右ウインディーパレードの15

 また、1ハロンの最速は、同じエフテーストライクの15とイシュタルキャストの15の組の12秒2が最も速いタイムであった。

左イシュタルキャストの15、右エフテーストライクの15

左イシュタルキャストの15、右エフテーストライクの15

 昨年までは、とりわけ牝馬の方が仕上がっており、騎乗供覧でも想定した以上に走ってしまうケースがままあったが、今年はそれとは一転し、どうかすると地味で淡泊な印象さえ感じられるような騎乗供覧であった。

 なお、騎乗供覧には13名のBTC研修生たちが、JRA日高育成牧場のスタッフとともに育成馬に元気良く騎乗していた。外を併走する先輩に見守られながら、懸命に馬を追う姿が印象的であった。

 この後、来週月曜日に、育成馬たちは日高育成牧場を後にし、一路中山競馬場に向け出発する。そして、宮崎育成牧場の22頭と合わせ、計82頭が来る25日(火)に開催されるブリーズアップセールに上場される予定になっている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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