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▲牝馬ファンディーナの参戦に沸いた皐月賞、多額の馬券マネーはどこに行くのか? (撮影:下野雄規)
春の競馬シーズンも佳境に入った。4月30日からは6週連続でGI競走が続き、5月28日の日本ダービー(東京・GI、芝2400m)でクライマックスを迎える。新規ファンの参入も多い時期。自身が買った馬券の代金(売り上げ)はどこに行くか、考えたことはあるだろうか? 馬券マネーの行き先を気にする人はそう多くないだろうが、カネの流れは競馬産業の構造や、業界と社会の結びつきを映す。今回は馬券マネーの流れを整理する。
2本立ての国庫納付金―JRA
競馬に限らず、日本の公営競技は「控除率25%」で運営されている。きれいに25%ではないが、購入者に払い戻される率は約75%。長く買い続けると、回収率は75%前後に収束する。個々のファンの馬券の巧拙も、長期的に75%を上回れば「巧者」と見て良い。
払戻金への課税を巡って争われた刑事・行政訴訟の当事者となった大阪市の元会社員は、2005-09年の間に約35億986万円を購入し、約1億5507万円のプラスをたたき出した。回収率104.4%だから、神の領域と言って良い。余談になったが、今回のテーマは購入者の懐に戻って来ない資金の行方である。中央と地方で大きな差異があり、JRAから見ていく。
特徴的なのが国庫納付制度だ。日本では刑法で賭博・富くじが禁止されており、公営競技はそれぞれの特別法で公益目的を定め、刑法の適用除外として運営される。第2次世界大戦前の競馬は軍馬育成が目的だったが、戦後は他競技同様、財政貢献に変わった。
JRA以外は地方自治体が運営しているため、収益の行き先も自治体。だが、JRAは公営競技団体で唯一、国の全額出資で設立されており、馬券の収益も一部は国庫に入る。国庫納付は「第一」と「第二」の2種類で、「第一」は売り上げの10%が各開催ごとに支払われる。名前は「税金」でなくても、実質は税金。額面100円の馬券は、90円の商品に10円の消費税が乗っている形で、税率11.1%だから実際の消費税(8%)より割高だ。もともと11%だったが、56年の地方税法改正でJRAが固定資産税を支払うことになり、10%に変更された。
「第一」が馬券購入者の消費税なら、「第二」はJRAへの法人税に近い。売り上げの約75%を的中者に払い戻し、10%を国庫納付すると、残りは約15%。ここからレースの賞金・手当や競馬開催の経費、人件費などの経常的コストを支出。最終的に剰余金が出ると、その半額は「第二国庫納付金」となる。額の大小は財務体質も示す。