今年のNHKマイルカップには、桜花賞の4、5、11着馬と、皐月賞の10、12、13着馬、そしてトライアルのニュージーランドトロフィーの1、3、5、7、10着馬が出てくる。
牝馬クラシック路線、牡馬クラシック路線、マイル路線のそれぞれで、まずまずの結果を出した馬たち、今ひとつだった馬たちが、ここで相まみえる。
NHKマイルカップというのは、3歳マイル王決定戦であるわけだが、今年に関して言うと、前記の3つの路線のレベルを比較できる一戦にもなりそうだ。早い時期から「強い」と言われつづけてきた今年の3歳牝馬は、本当にハイレベルなのか。その答えを、ある程度の確度で出すレースになる。もちろんほかのレースでも答えは出されるのだが、GIのガチンコ勝負でこそ見えてくるものは多い。
1番人気になるのは、桜花賞で4着だったカラクレナイか。あの末脚は東京の長い直線でより爆発力を発揮しそうだし、祖母がレッドチリペッパーと底力のある母系で、鞍上がミルコ・デムーロ騎手となれば、勝ち切るシーンが目に浮かぶ。
桜花賞5着のアエロリットも、従兄弟にミッキーアイルがいる良血で、これまで新馬戦から1-2-2-2-5着と崩れていない。
そして、桜花賞では11着に終わったが、その前の朝日杯フューチュリティステークスで牡馬相手に1番人気に支持され4着になったミスエルテもいる。昨秋から「この世代の牝馬が強い」と言わしめた筆頭格はこの馬なのだし、3カ月の休み明けだった桜花賞より状態はぐっとよくなっている。
こう見ていくと、牝馬に関しては、全日本2歳優駿を勝ったリエノテソーロを含め、面白い馬たちが出てきたことがわかる。
皐月賞で負けてここに来た3頭は、着順ほど大きく離されていたわけではないので、それらの牝馬のレベルを計るのに格好の相手になるだろう。
トライアル組は、勝ったジョーストリクトリはもちろん、3着のボンセルヴィーソは朝日杯でも3着だから強い。さらに別路線組には、朝日杯でボンセルとミスエルテに先着する2着だったモンドキャンノもいたりと、けっしてドングリの背比べではなく、レベルの高い混戦と言うべきだ。
いつもプレビューを書いている別のコラムがきょうは休載なので、ここに私の買い目を記したい。
◎カラクレナイ
○モンドキャンノ
▲ミスエルテ
△ボンセルヴィーソ
×アエロリット
注ジョーストリクトリ
私は、予想をしながら翌日のスポーツ新聞の見出しを考えることがよくある。
「やっぱり3歳牝馬は強かった」「怪物娘が本領発揮」「遅れてきた桜前線、上位独占」なんていうふうにならないだろうか。
当日はもちろん東京競馬場に行くのだが、ちょっと行きづらい部分もある。
それはなぜかというと――。
先月、関わっているテレビ番組の収録に顔を出せなかったとき、プロデューサーのソブさんに、「今は札幌にいるし、膝の手術もしなきゃいけないので、時間がとれそうにありません」と伝えた。それが「手術」という部分だけクローズアップされて収録現場でひろまり、「また競馬場でお会いできる日を楽しみにしています」とメッセージをくれた人もいた。実は、そんなにたいした怪我ではなく、右膝の前十字靱帯の再建手術を30年ほど前にしたのだが、最近ちょっと関節がゆるくなり、カクンとズレて転びそうになることがあるので、病院で診てもらった。再手術もできると医師に言われ、MRIなどの検査を来週受ける、という段階なのだ。
たくさんの人が心配してくれているのに、競馬場でピンピンして馬券を買っているところを見られたら、バツが悪い。
ところで、ソブさんの撮影した富士山の写真が大きな写真展で入選し、その展示会が本稿がアップされる5月6日まで、渋谷ヒカリエ9Fのヒカリエホール・ホールBで開催されている。入選作が掲載されている写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』(東京カメラ部/日経ナショナルジオグラフィック社)をソブさんが送ってくれたのだが、どの写真も素晴らしく、眺めていると時間を忘れる。
また、競馬小説も書いている蓮見恭子さんの『シマイチ古道具商―春夏冬(あきない)人情ものがたり―』(新潮文庫)も、読みはじめたばかりなのだが、とても心地好いというか、作中の世界の肌ざわりがいいというか、出会えてよかったと思える作品だ。店主の名が島田市蔵というのもいい。
五月病の季節だが、取材や〆切で忙しいせいか、まだ発病していない。連休明けの〆切が終わったころが要注意か。ちょうど膝の検査のころだ。こういうことばかり考えるのがよくないのかな。さあ、週末は競馬に集中しよう。