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価値が100倍以上になった馬が登場したアルカナ・ブリーズアップセール

  • 2017年05月17日(水) 12時00分


◆絶好調の市場が展開されている欧州セール

 5月12日(金曜日)に仏国のドーヴィルで行われた「アルカナ・ブリーズアップセール」で、140万ユーロ、日本円にしておよそ1億7360万円という、仏国の2歳セールとしては歴代最高価格で購買される馬が出現した。しかもその馬が、昨年秋の1歳セールにて1万5000ドル(当時のレートで約150万円)という廉価でピンフックされていた馬だったことが、大きな話題を呼んでいる。

 わずか7カ月ほどの間に自身の価値が100倍以上に跳ね上がり、ピンフッカーに莫大な利益をもたらしたのは、上場番号35番として登場した、父ストリートセンス・母ミスティックメロディーの牡馬だ。同馬はゴドルフィンによる生産馬で、母ミスティックメロディーはフランスで走り、LRコロネーション賞(芝1800m)を含めて2勝を挙げた他、G3ヴァントー賞(芝1800m)2着、G3レセルボワ賞(芝1600m)3着などの成績を残している。

 母の1歳年上の半兄に、G1トラヴァーズS(d10F)など2つのG1を制したアルファがいるから、悪くないファミリーを背景に持っている。G1ケンタッキーダービー(d10F)やG1BCジュヴェナイル(d8.5F)を制したストリートセンスを交配されて、15年4月13日に生まれたミスティックメロディーの7番仔が、今年2歳になった当該馬だ。

 昨年9月に北米のケンタッキー州で開催されたキーンランド・セプテンバーセールに上場された同馬は、ジム・マッカータン氏とウィリー・ブラウン氏のパートナシップの代理人を務めたMCブラッドストックに、1万5000ドルで購買されている。血統背景の割には安値に落ち着いたのは、ミスティックメロディーがこれまで産んだ仔から、めぼしい活躍馬が出ていなかったことが影響したものと思われる。
 
 ウィリー・ブラウン氏が営む「モックラースヒル」は、欧州では有数のコンサイナーで、愛国にあるブラウン氏の育成場で鍛えられた母ミスティックメロディーの2歳牡馬は、欧州各地で開催される2歳セールの中から、仏国のドーヴィルでアルカナが開催する市場に登場。特大のホームランをかっ飛ばすことになったわけである。
 
 購買したのは、欧米両大陸で現役馬を所有しているフェニックス・サラブレッズの代理人を務めたケリ・ラドクリフで、同馬はラドクリフの夫であるジェレミー・ノシダ調教師がニューマーケットに構える厩舎に入厩することになる模様だ。ラドクリフ女史によると、この春欧州各国で開催される2歳セールに上場される馬たちを全頭見た上で、この馬が「最高の出来」と判断しての購買であったそうだ。
 
 「アルカナ・ブリーズアップセール」は、全体の市況も好調だった。上場された124頭のうち、92頭が総額1289万6000ユーロで購買され、総売り上げは前年に比べて23.2%上昇。平均価格が前年比27.2%アップの14万174ユーロ(約1738万円)、中間価格が前年比28.4%アップの8万6000ユーロ(約1066万円)と、いずれも良好な数字を記録した。ただし、昨年は17.4%だったバイバックレートが、今年は25.8%に上昇。いささかラフな面もあるマーケットが展開されている。なお、日本人によると見られる購買はなかった模様だ。
 
 欧州では、4月に英国のニューマーケットで開催された「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール」も、平均価格が前年比で30%以上、中間価格が前年比で40%以上も上昇するという、絶好調の市場が展開されている。政治的な面では不透明感を残している欧州だが、競馬界のビジネスは順調に推移しているようである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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